2024年 4月 16日 (火)

「羽賀やれ、ジャニーズやめとこう」 芸能マスコミ衰退の深層
(連載「テレビ崩壊」第1回/芸能リポーター・梨元勝さんに聞く)

   テレビがあえいでいる。相次ぐ取材のトラブルや捏造放送。広告の急激な落ち込み。地上デジタル放送への完全移行に伴う不安。そして、肝心の視聴率にも低下の兆しが見える。マスコミの中では「不沈艦」に等しいと思われたこの業界に、かつてないほど厳しい状況が出現している。テレビの将来はどうなるのか。全10回のインタビューシリーズで考える。

   初回は、「恐縮です!」でおなじみの芸能リポーター・梨元勝さんに、ワイドショーを初めとするテレビ芸能ジャーナリズムのあり方について聞いた。

――芸能マスコミの勃興期は1970年代だと言われます。当時と比べると、今は悪くなった?

梨元 とにかく今は、どうにもなりません。僕は週刊誌時代を含めると、芸能記者を41~42年やっています。テレビだけでも35年ぐらい。振り返ってみると、今の状態は、「出だしよりも悪い。だったらやらないほうが良かった」というぐらい悪いです。
   そもそもワイドショーに芸能ニュースが入ったのは、30年ほど前。当時、和田アキ子が前の夫と離婚したというニュースがあって。ちょうど僕は週刊誌からテレビに転身した直後でした。「取材しなきゃ」と思っていたのですが、和田アキ子に密着していたテレビクルーは離婚のことを何も知らなかった。僕が所属事務所に取材をしようとすると、「テレビが、そんなことをやるんですか!?」と驚かれました。そんな時代でした。

ジャニーズやバーニングは、タレントを守ろうと頑張る

ケータイなどで進めている取り組みについて「ノーモア地上波」と語る梨元勝さん
ケータイなどで進めている取り組みについて「ノーモア地上波」と語る梨元勝さん

――当時の芸能マスコミは、何を目指していたのですか。

梨元 雑誌の原点は「人間を追いかける」。スキャンダルで「飛ばす」ことは時にはあったのですが、「マンネリ化」の対極にあたるセンセーショナリズムを持ってやってきたんです。一方のワイドショー。芸能については週刊誌を解説するくらいだったのが、「自分たちで取材して、自分で伝えたい」となり、(午後のワイドショーの先駆けとして知られる)アフタヌーンショーで芸能がレギュラー化する、という流れができました。これに他の局が追随したんです。

――雑誌から転身してみて、テレビにどんな魅力を感じたのでしょうか。

梨元 テレビが雑誌と違うのは、「状況を映し出す」力があることです。例えばあるタレントさんの同棲が発覚して、自宅に直撃取材する。ドアから呼びかけるけど返事がなくて困っている中、カメラは玄関の植木と、隣の家でワンワン吠えている犬の顔にズーム・インする。活字にすると「何だこりゃ」ということになってしまうのですが、映像にすると、それなりに成立してしまいます。テレビでは、よく玄関で「ピンポンピンポン」ってやってますが、「取材してきました」という状況を示すための一種のアリバイ証明のようなものなんですね。活字が平面的なものだとすれば、音と映像があるテレビは立体的。それだけ人を引きつける力があるんです。それだからこそ、取材が活きる。
   週刊誌では、取材は「とにかく現場に行く」ことです。新聞みたいに支局がある訳ではありません。これをワイドショーに、そのまま持ち込んだんです。それで、ワイドショーは伸びてきた。ここまでは良かった。

――では、何が転機で暗転したのでしょうか。

梨元 ここまで話したようなことは、十分後輩に伝えてきたと思ってたんです。でもそうではなくて、テレビは大いなる勘違いをしている。テレビは偉くも何ともない。新聞やラジオなど媒体にはそれぞれ特徴があって、テレビにはインパクトがある。でもそれは「偉い」ということじゃない。ところが、ディレクターの様子を見てみると、どうも違う。例えばセーター。これって着るもんですよ。それを腰の周りで結びつける。河田町(お台場移転前のフジテレビ)には、実際に、そういう人がいたんです。日本人は油足なんだから、石田純一以外は靴下を履けばいい。なのに素足で靴を履いている。打ち合わせでは机の上に足を乗っけている。そんなことだから、色々な人につけ込まれるんです。

――テレビ局側の「気のゆるみ」のようなものをきっかけに、ワイドショーの活力がなくなった、ということでしょうか。

梨元 プロダクションも「何で梨元が来るんだ」と、その理由を懸命に学習した訳です。その結果、「事務所はタレントを守らないといけない。良い話は出して、悪い話は出さないようにする方法はないだろうか」。これが、最近問題化している肖像権問題などの発端です。
   逆に言うと、ジャニーズやバーニングなどの事務所は、タレントを守ろうとして頑張っているんです。例えば、ワタナベエンターテインメントの広報担当者は見事なもので、「羞恥心」の野久保直樹が深夜の1時半ぐらいにブログで「独立宣言」をしたときに、ケータイでやっている「梨元芸能! 裏チャンネル」で速報したのですが、すぐ「事務所が認めたものではない」という連絡がありました。この対応の早さ・瞬発力には驚きました。一日中ウォッチしてるんでしょうね。
姉妹サイト

注目情報

PR
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中