2024年 4月 20日 (土)

高橋洋一の民主党ウォッチ
量的緩和なぜやらない 日銀の「本業」とは何か

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   一般にノーベル経済学賞といわれるが、正式名はアルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞という。残念ながら日本人の受賞者はまだいない。授賞式などは他のノーベル賞と同じように行われているが、ノーベルが遺贈したものではなく、スウェーデン国立銀行が設立した賞である。

   スウェーデン国立銀行はスウェーデンの中央銀行で、日本の日銀に相当する。世界最初の中央銀行として知られ、1931年にスウェーデンを襲った危機に対して、インフレ目標を導入し、大恐慌からいち早く抜け出たことで有名である。そうした歴史と伝統であろうか、国民は経済学を信頼しており、ノーベル経済学賞の創設にもつながっている。ちなみに、今ユーロ圏はギリシャ問題に苦悩している。ユーロ圏の国は、共通通貨で広い市場を享受できるが、一方で金融政策を失うことにもなる。こうした事情から、スウェーデンは、イギリス、デンマークなどとともにまだユーロ圏に参加していない。

経済学を学んでいる学生ならおなじみの計算式

   そのスウェーデンもリーマンショックに見舞われた。スウェーデン国立銀行は、消費者物価指数で年率2%プラスマイナス1%のインフレ目標をとっていた。ホームページには、温度計でインフレ率が示されており、1%以下は「寒い」青色ゾーン、3%以上は「暑い」赤色ゾーンになっている。スウェーデンの消費者物価指数は、リーマンショック以降急速に低下し青色ゾーンになり、2009年4月から11月までにマイナスにまでなった。しかし、リーマンショック以降、スウェーデン国立銀行は、ただちに非伝統的金融政策(ゼロ金利と量的緩和)に踏み切った。バランスシートの規模をそれ以前の3倍以上にした。そして、10年2月、1.2%とインフレ目標の範囲に戻り、今でも維持されている。

   当時、スウェーデン国立銀行のステファン・イングブス総裁が行った説明はとても簡単だ。彼は、

貨幣数量式 M(貨幣ストック)× V(流通速度)=P(価格)× Y(生産量)

を描いた。これは、大学で経済学を学んでいる学生であればおなじみのはずだ。

   そして、非伝統的金融政策の効果は、いろいろな人がいろいろ言うが、この式の通りでいい。危機になると、流通速度は小さくなる。それでも、価格が下がらないように、また生産も下がらないようにするためには、貨幣ストックを増やすしかない。ノーベル経済学賞のスポンサーの中央銀行の総裁が学生のような説明をするのかと、私はとても驚いた。彼の説明はそれと、「海外の中央銀行もやっているからやろう」だけだった。

   かつて、日本でも、このような説明をした経済学者がいたが、多くの学者から、そのような単純な貨幣数量説(英語では貨幣数量「理論」quantity theory of moneyだが、なぜか日本語では「説」と訳す)を信じているのかと冷や水を浴びせられた。

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