2024年 4月 19日 (金)

高橋洋一の民主党ウォッチ
円高に「のんき」な民主党 「無策」日銀の代弁者か

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   円高がおさまらない。2010年8月11日の外国為替市場で円相場は一時、1ドル=84円72銭まで上昇し、1995年7月以来15年1か月ぶりの高値を付けた。この水準になると、輸出企業の収益が悪化し、日本経済にとって好ましくない。日本はなんだかんだといっても、一部のエクセレントカンパニーは輸出で食っているので、為替レート水準は経済全体に大きな影響がでる。

   今回の円高は、政府・日銀の無策の結果である。円相場で円高が進んでいることを受け、野田佳彦財務相は口先で注視するというが、本当に視ているだけで、何の行動も伴わない。直嶋正行経済産業相は、輸出関連の約200社を対象として緊急ヒアリング調査を行うだけ。内閣府では、大塚耕平副大臣が「まず総合的な日銀に対する評価だが、日銀が現在行っている政策は、10年前、15年前など当時の金融政策の常識から考えれば、かなり踏み込んでおり、評価できる」なんて、のんきなことをいう。そんな昔と比べてどうするのですか。比べるべきは先進国の金融政策である。

「デフレターゲット」にみえる

   さらに、大塚副大臣は「(日銀は)すでに事実上のインフレターゲティングをやっている」と、まるで日銀の代弁者のように答えている。実際はまったく違っており、「デフレターゲット」をやっているようにみえる。実際、ここ10年間の消費者物価の動きをみると、マイナス1%から0%の狭い幅にほぼ8割方おさまっている。他の先進国ではだいたい1%から3%におさまっているに対して、日本のこの数字だけみても、日銀がデフレターゲットを行ってきた疑いが濃厚である。

   日銀は一生懸命頑張ったが仕方なかったというだろうが、私は、政府内部にいたので、その意見が怪しいことを体験している。今は休眠中である経済財政諮問会議の運営について、竹中平蔵経済財政担当相(当時)は就任後内閣府の中に特命室を作った。特命室の仕事は、民間議員ペーパーのドラフト作りだった。特命室は、内閣府の2、3名の職員と私のように外部の人で構成されていた。当時からデフレが問題であったので、デフレとは物価下落のことであるので、何とかして政府と日銀とで共有できる物価の数値政策目標を作ろうとしていた。

   日銀はその共有目標に反対であった。そして金融政策の内容・タイミングについて日銀に任せてくれというスタンスだった。その結果、この10年間物価下落が続いた。これだけでも、日銀がデフレターゲットをしてきた証拠といえる。さらに、2006年3月の日銀による量的緩和解除では、さらに明確な証拠がある。その当時、竹中さんは総務大臣として私は大臣補佐官として総務省に移り、直接マクロ経済政策にタッチしていなかった。しかし、物価統計を所管する省として、また竹中さんは閣僚として、量的緩和解除に反対の立場だった。

代表選睨み政策出し惜しみ?

   福井俊彦日銀総裁(当時)は、デフレ脱却を小泉政権に約束して総裁になった人だったので、総裁就任当初は多少ともやる気はあっただろう。しかし、小泉政権が末期になり、竹中さんが経済財政担当相から離れると、デフレにもかかわらず量的緩和解除で金融引き締めに前のめりになった。06年3月当時の消費者物価は数値はプラスであったが、これは統計上の上方バイアスというものであり、その年の夏には改訂されるので、実質的にマイナスであると日銀に伝えた。それに関わらず、量的緩和解除をして、その後は一時のエネルギー要因を計算から除いてマイナスのままだった。完全な失敗だった。ここ10年間の日銀の金融政策は、デフレから脱却しかかる(物価がプラスになりそうになる)と、必ず金融引き締めを行い物価をマイナスに押し戻しているので、デフレターゲットをとっていると見なされても仕方ない。

   今回もまったく日銀は無策だった。物価上昇率の予想値を表す市場のブレーク・イーブン・インフレ率では、日本はマイナス1%程度でも日銀は動かず、米国はプラス2%を割り込むとFRB(連邦準備理事会)が金融緩和に動き出す。10年8月10日は、日米で金融政策の発表が行われたが、日銀は何もせず、FRBは事実上の金融緩和だった。これで、日米の金利差は縮小するので、円高になるのは当然である。しかも、日銀は、9月の民主党代表選を睨んで、政策の出し惜しみをしたようだ。これは本来あってはならないことだ。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。


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