2024年 4月 19日 (金)

ジョンウン氏漢字名は「正恩」 「恩を与える」後継者という意味?

   北朝鮮の金正日総書記の後継者が、三男のジョンウン氏に決まったことが正式に発表され、写真も公開された。写真と同様に明らかにされてこなかったのが、ジョンウン氏の漢字表記だ。「正雲」「ジョンウン」「正銀」などと二転三転、結局「正恩」だったことが発表された。日本側から北朝鮮にメールで問い合わせて3日たって、やっと「正恩」という「正解」が明らかになった。

   中国政府関係のウェブサイトも「正銀」と表記してしまうなど、中朝間の微妙な距離感も浮き彫りになっている。

平壌の朝鮮中央通信にメールで問い合わせて判明

   北朝鮮では、1970年代から、ほとんど漢字は使われていない。そのため、人名表記は、北朝鮮側から発表がない限り、ハングルの音に対応する漢字を推測して使用しているのが現状だ。実際、金正日総書記が故・金日成主席の後継者として取りざたされていた際も、当初は各メディアが「正一」などと表記してきた。後に朝鮮総連経由で「正日」と伝えられ、それ以降は「正日」の表記が使われているという経緯がある。

   朝鮮中央通信の公式ウェブサイトを運営している朝鮮通信社(東京都文京区)によると、同社が9月28日に正恩氏の漢字表記について平壌の朝鮮中央通信にメールで問い合わせたところ、10月1日の9時頃に返信があった。ハングルで書かれたメールの中に、漢字で「正恩」の表記があったという。

   金正日総書記の後継者として、最初に正恩氏の名前が取りざたされたのは2003年のことだ。6月には韓国の朝鮮日報が、情報当局者の話として「後継者として有力視されている」と報じたほか、9月には聯合ニュースが「後継者として準備が進められているもよう」などと報じた。この頃から、日本メディアは足並みを揃える形で「正雲」の表記を使ってきた。

   だが、09年10月になって、韓国統一省が、北朝鮮内の文書などを根拠に「ハングル表記を変更する」と発表。このハングル表記は「正雲」とは対応しないことから、各紙はいっせいに「ジョンウン」と表記を変更した。ただし、日本国内メディアの中で毎日新聞だけは、09年11月29日の1面に、

「毎日新聞が入手した内部文書によって、『ウン』については『雲』ではなく『銀』や『恩』などに当たるハングル表記であることが既に判明しています。その後の取材で北朝鮮関係者の多くが漢字表記は『「正銀」が適切』と証言しました」

との「おことわり」を出し、「正銀」の表記を続けてきた。

友好国中国の国営新華社通信も「正銀」と誤る

   かなり以前からブログで「正恩」の表記を続けてきたコリア・レポートの辺真一編集長は、

「『正銀』という表記は、常識ではあり得ません。人名録を見ればわかりますが、『銀』という漢字は、女性にしか使わないと言ってもいい。朝鮮半島には、『恩を与える』という意味の慣用句があるのですが、その意味でも、『正恩』という表記が適切だと思っていました」

と、一刀両断。

   だが、「正銀」説をとったのは、毎日新聞だけではない。

   中国国営の新華社通信は9月28日、朝鮮中央通信を引用する形で、「『正銀』氏」に大将の称号が与えられたことを平壌発で報じているし、中国外務省のウェブサイトに掲載されている9月28日の定例記者会見の質疑応答でも、「正銀」と表記されている。

   辺編集長は、

「これで明らかになったのは、北朝鮮は事前に中国側に情報を流したりはしていなかった、ということ」

と、両国間の距離感を指摘。さらに、

「正恩氏の漢字表記を知っているのは、名付け親の金正日総書記だけ。日本から問い合わせを受けてから返答に3日間もかかったのには、担当者が金正日総書記に話を上げるのに時間がかかったからでしょう」

と話している。

   日本メディア各紙は10月1日夕刊で、今後は「正恩」と表記する旨の「おことわり」を掲載。毎日新聞も、

「北朝鮮当局が公表していなかったため、ハングル音や北朝鮮関係者の証言などから『正銀』と表記していました。公式報道を受け、今後は『正恩』と表記します」

としている。

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