2024年 4月 20日 (土)

高橋洋一の民主党ウォッチ
新卒者に冷たい民主菅政権 守るのは労組員と官僚の雇用

   大学にいると就職氷河期の話になることがしばしばだ。大学では、親密先の企業合同説明会を開いたり、模擬面接をしたり、精一杯の努力をしている。

   一方、大学で経済学を教えている立場からみれば、こうした努力には限界を感じざるを得ない。というのは、雇用は、個々の人や職場などのミクロ要因と経済全体での需要不足というマクロ要因が関係している。大学や学生、企業の努力はミクロ的なミスマッチの解消には役立つが、マクロ経済での需要不足はいかんともしがたいからだ。

日本郵便、2012年度の新卒採用中止

   現在マクロ経済でのGDPギャップ(需要不足)は20~30兆円あるとされているが、これだけあると、どうしてもある程度の失業は避けられない。それは、正規・非正規雇用者が雇用を失うだけでなく、新卒者が雇用されないことも意味する。むしろ、正規・非正規雇用者はすでに雇用されているという意味で既得権者であるが、新卒者はこうした既得権を持っていない。そのため、雇用問題の被害をもっとも先鋭的に受ける。

   厚生労働省によると、2011年春の卒業予定者の昨10年10月1日時点の就職内定率は、前年同期比4.9%減の57.6%と、調査が始まった1996年以来で過去最低となっている。

   政府は、大学卒業から3年以内の既卒者を採用した企業に1人当たり100万円の奨励金を出すことを決めた。もっとも、これは卒業者を助けることになっても採用枠が増えるわけではなく、新卒者にとって厳しくなる。100万円というカネがでるわけなので、効果はマイナスにはならないが、どの程度の効果になるのかあとで検証が必要だろう。

   一方で、政府の国家公務員の新規採用は4割もカットした。再国有化され、事実上政府の管理下になっている日本郵便(郵便事業会社)も、業績悪化を理由として、12年度の新卒採用を中止すると発表した。07年の民営化後は毎年1300~1600人程度と新卒を大量採用してきたが、初めての見送りになる。民営化以前にさかのぼっても、新卒採用の見送りは8年ぶりだ。

   しかし、ここでも新卒者は冷遇されているが、雇用されている既得権には優しい。国家公務員の給与改定では、人事院の調査ベースがおかしいことはこのコラム(「国税庁調査の数字使えば 公務員給与は5.5%減になる」10年12月9日)でも指摘しているが、菅総理も10年秋の代表戦では、人事院勧告を上回るカットをすると大見得をきった。ところが、労組などからの突き上げであっさりと断念してしまった。民主党支持母体の労組は、当然のこととして組合員つまり既得権者擁護のための組織なのだ。

   日本郵便でも、非正規雇用を正規雇用にし、非正規といいながらも雇用を得ている既得権者にはやさしいが、新卒者という既得権のない人には厳しい。

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