2024年 4月 25日 (木)

高橋洋一の民主党ウォッチ
最優先課題コロコロ変える 口舌の徒菅首相の「変節」

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   菅内閣になって、政権の最優先課題はコロコロと変わってきた。

   政権発足間もない2010年の参議院選挙の頃は、「消費税10%」、直後の8月にあった民主党代表選では、「雇用を起点とした成長戦略」、9月に入ると「TPP」。これは11月のAPEC向けとしか思えないポーズだった。2011年1月になると、自民党時代に政策運営で対峙していた与謝野馨氏を入閣させ、「税と社会保障一体改革」を最優先とした。与謝野氏の節操のなさも問題だが、この人事では与党内からも『よそのさん』と揶揄された。

消費税10%、成長戦略、TPP、そして…

   さすがにこの頃になると、与党内でも菅首相の政治姿勢に疑問符が生じるようになった。それに対して、菅首相は「脱小沢」で切り返した。政策ではなくても、大衆が食いつきやすいテーマであればなんでもいいのだろう。

   与党内の不満分子を「脱小沢」で切り捨て、政治的な苦境からの脱出を模索しているときに、東日本大震災が起こった。その直前に批判されていた外国人政治献金問題もうやむやになった。大震災で与党内部にあった菅降ろしが一気にしぼんだ。だが、震災対応や原発対応での不手際で、再び菅降ろしが起こった。

   ここで持ち出したのが「脱原発」。一方、政治手法ではズル菅の本領発揮で、騙されるほうも悪いが鳩山前総理や民主党員を騙して、内閣不信任案を乗り切った。首相は内閣不信任か解散・総選挙しか法的にはやめさせることができないので、辞めないと言い張る菅首相は今や無敵状態だ。

   そして、退陣時期が取り沙汰される最中で、また突如政権の最優先課題として浮上したのが「電力買取り法案」だ。

   これまでいろいろと政権の最優先課題を持ち出すが、どれも結果を出していない。課題をあげるだけなら評論家でもいえる。政治家に求められているのは結果だ。

   いうまでもないが、政権の最優先課題は一つだ。それも1年くらいではできない。用意周到な準備の上で、政治的な山がいくつもあり、3年くらいかけて行う。私が深く関係していた郵政民営化も、経済財政諮問会議での議論に1年、法案準備で1年、その後総選挙などがあって、実施まで2年と計4年間を費やした。

「第4列の男」リーダーにふさわしくない

   これだけ、政権の最優先課題を次々と掲げてやらないと、いくら忘れやすい国民もまたかと思ってしまう。官僚もどうせまた口だけでやらないと思って、手抜きをするだろう。

   「電力買取法案」は今回の原発対応で出てきたわけではない。3月11日の震災当日、まさに震災の直前に閣議決定されていたものだ。

   さらに、その経緯はかつて世界一だった太陽光発電分野でドイツに抜かれたことだった。ドイツでは固定価格買取制度によって急速に普及が進んだので、麻生内閣で「余剰電力買取り制度」が導入され、その延長線上で今回の法案になっている。

   しかし、菅政権はまったくやる気がなかった。閣議決定後、4月5日に国会に提出されたが、趣旨説明すら行われていない。菅政権は国会を開いていると世間から批判されるとして、6月22日に国会を閉じて夏以降に補正予算を先送りする考えすら持っていた。そのときには、「電力買取法案」はまったく蚊帳の外だった。

   なお、震災前には原子力輸出に熱心で、そのための法案は早く国会に出して審議して既に成立している。

   菅首相は学生時代に学生運動に熱心だった。ところが、機動隊とぶつかる場面ではいつも「第4列」にいた。そこは検挙される可能性がほとんどないからだ。そのうち演説はうまいが、実行段階では体を張らない「第4列の男」と呼ばれるようになった。

   口だけで先頭に立たない「第4列の男」はリーダーにふさわしくない。延命のために、実行しない政権の最優先課題を連発してほしくない。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。


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