2024年 4月 24日 (水)

東電は原発から「敵前逃亡」しようとした 菅、枝野、海江田の主張はほぼ一致

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   東京電力福島第1原子力発電所の事故について検証を行う「国会事故調査委員会」(黒川清委員長)の参考人聴取が、大詰めを迎えている。その焦点のひとつが、東京電力が現場からの「全面撤退」を検討したかどうかだ。これまでに発表された報告書でも見解が異なっている上、国会事故調で証言した官邸と東電の当事者の主張も、真っ向から対立している。

   問題となっているのが、2011年3月14日夜から15日未明にかけての対応。清水正孝社長(当時)が官邸に全面撤退を電話で打診し、菅直人首相(当時)が清水氏を官邸に呼びつけ「撤退などあり得ない」と激怒したとされる。15日早朝に菅氏が東電本店に乗り込んで政府と東電の事故対策統合本部が立ち上がった。

事故当時は重要免震棟に750人がいた

菅直人前首相は11年3月15日早朝、東電本店に乗り込んだ
菅直人前首相は11年3月15日早朝、東電本店に乗り込んだ

   この全面撤退の検討を、東電側は一貫して否定し続けている。東電が11年12月2日に発表した中間報告書では、

「当社が官邸に申し上げた趣旨は、『プラントが厳しい状況であるため、作業に直接関係のない社員を一時的に退避させることについて、いずれ必要となるため検討したい』というものであり、全員撤退については、考えたことも、申し上げたこともない」

との記述がある。「部分撤退」に過ぎないとの主張だ。

   12年3月14日には、事故当時の原子力部門のトップだった武藤栄・前副社長が、国会事故調の参考人として同様の主張をしている。武藤氏によると、当時は重要免震棟に750人ほどが留まっていたが、2号機の状況が切迫しており、

「750人の人間、全部がそこにいる理由があるかというと、それはないだろうという風に思われた」

としながらも、

「2号機を何とか収束させるということに、みんなが頭を、知恵をしぼっている中で、福島第1の緊急対策本部は当然だが、本店も含めて、ご指摘のような全員の撤退ということは全くなかったと申し上げることができる」

と全面撤退を完全否定した。

東電本店「一部撤退」の具体的内容把握せず

   菅氏が東電本店に乗り込んだことについては、

「菅総理が早朝来られて、我々が全く考えてもいなかった全員撤退を『あり得ない!』とおっしゃったので、あのー、私としては、どう、何と申しますか、違和感があったな、というところ」

と困惑を隠さなかった。ただし、東電が申し出たとされる「一部撤退」の内容については、

「本店から判断がつかなかったので、そこは発電所が必要な人間を残すということで、判断をするというように思っていた」

と、具体的には把握していなかった。

   勝俣恒久会長も、5月14日に、

「基本的に、我々は全然考えていません。当然の事ながら、その前から生死の問題がかかる話でも、職員は、頑張って色々な調査等々をしてもらっている中で、そんなことは全く考えていない」

と述べた。

   政府・官邸側は、東電に主張に真っ向から反論。

   海江田万里経産相(当時)は、5月17日に、

「『退避』という言葉があったが、『一部』との話はなかった」

と、「全面退避」だと受け止めたことを明かしているし、枝野幸男官房長官(当時)も5月27日、

「『そんなこと(全面撤退)したら、コントロールできなくて、どんどんどんどん事態が悪化していって、止めようがなくなるじゃないですか?』というような趣旨のことを、(清水氏に)私から指摘している。それに対して、口ごもったような答えだったので、『部分的に残す』という趣旨でなかったのは明確」

と述べた。菅直人前首相も、5月28日の国会事故調で、

「海江田経産大臣が来て、『東電から「撤退したい」、そういう話が来ている。どうしようか』。そういう形で撤退の話を聞いた」

と語っている。

「撤退はありませんよ!」に清水元社長「はい、分かりました」

   また、東電が「全面撤退」を否定する根拠のひとつとして挙げているのが、菅氏の国会答弁だ。例えば、

「社長にお出ましをいただいて話を聞きました。そしたら社長は、『いやいや、別に撤退という意味ではないんだ』ということを言われました」(11年4月18日、参院予算委員会)

といったものだ。だが、この点について、菅氏は、

「私から清水社長に対して『撤退はありませんよ!』ということを申し上げた。それに対して、清水社長は『はい、分かりました』と答えた」
「勝俣会長が、『清水社長が「撤退しない」と言った』と言っているが、少なくとも私の前で、(清水氏)自らが言ったことはない」

と反論。当初は東電が全面撤退を申し出たが、菅氏の強い反発で撤回したとの主張を展開した。

   国会事故調では12年6月中に報告をまとめる予定だが、福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)が12年2月に発表した報告書では、

「本調査でヒヤリングを実施した多くの官邸関係者が一致して東京電力からの申し出を全面撤退と受け止めていることに照らしても、東京電力の主張を支える十分な根拠があるとは言いがたい」

と結論づけている。

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