2024年 4月 19日 (金)

安倍氏の「日銀国債引き受け」発言 実は「買いオペ」省いた「誤報」だった

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   金融緩和圧力を務める自民党の安倍晋三総裁が、「禁じ手」とされる「日銀の国債引き受け」を求めたとして、与党や日銀、財界から猛批判を浴びている。

   だが、元々の発言を見ると、安倍氏が念頭に置いていたとみられるのは、「買いオペ」と呼ばれる日銀の通常業務。この「買いオペ」の単語が省かれて伝わったのが批判の原因だが、安倍氏が繰り返し発言を否定しても、誤った発言を前提にした批判や議論が絶えない。

   批判されているのは、安倍総裁が2012年11月17日に熊本市内で行った講演の内容。正確には、

「やるべき公共投資をやって…。これは、国債を発行しますが、建設国債、これはできれば日銀に全部買ってもらう、という買いオペをしてもらうことによって、新しいマネーが。いわば強制的に市場に出て行きます。景気には、いい影響がある」

と発言していた。

国債の日銀直接引き受けは財政法で禁じられている

安倍総裁発言で、誤った前提の議論が続いている
安倍総裁発言で、誤った前提の議論が続いている

   この発言は、日経新聞が同日15時30分に、

「『建設国債をできれば日銀に全部買ってもらう。新しいマネーが強制的に市場に出ていく』と述べ、日銀が建設国債を全額引き受けるのが望ましいとの考えを表明した」

と報じ、産経新聞も15時38分に、

「『やるべき公共投資をやり、建設国債を日銀に買ってもらうことで強制的にマネーが市場に出ていく』と述べ、政権復帰した場合、建設国債の日銀引き受けを検討する考えを示した」

と追いかけた。

   「買いオペ」(公開市場操作)とは、日銀が市場から債券や手形を買うことを指し、日銀は日常的に行っている。それに対して、「日銀の国債引き受け」は、財務省が建設国債を発行する際、通常は市場を通すが、日銀に直接引き受けてもらい、それによって得られた現金を公共事業に振り向ける、というもの。この手法は、戦前、軍事費を調達するために行われたことがあるが、財政支出に歯止めがかからなくなり、物価は数十倍に暴騰。この教訓から、戦後は財政法で日銀が国債を直接引き受けることを禁じている。

   各社が安倍氏の発言を引用する際に「買いオペ」という単語を省いたため、「禁じ手」とされる「日銀による国債の直接引き受け」が安倍氏の発言だと誤解され、広く報じられてしまった。

反論が「発言修正」と受け取られる

   もちろん、安倍氏側は反論している。11月20日には、

「『建設国債の日銀の買い切りオペによる日銀の買い取りを行うことも検討』と述べている。国債は赤字国債であろうが建設国債であろうが同じ公債であるが、建設国債の範囲内で、基本的には買いオペで(今も市場から日銀の買いオペは行っているが)と述べている。直接買い取りとは言っていない。言っていない事を言っているとした議論は、本来論評に値しない」

とフェイスブックに書き込んでいるし、11月21日午後の政権公約発表会見でも、同様の説明をした。

   だが、安倍氏の説明を「発言を修正した」と、誤った受け止め方をする向きもある。11月22日昼にテレビ朝日で放送された「ワイド!スクランブル」では、司会者が自民党の菅義偉幹事長代行に対して、

「言っている内容が変わったのか」

と質問。菅氏は、

「安倍総裁は、『建設国債を直接買い取る』ということは一言も言っていない。ですから、今の(解説の)作り方も、全く違うと思いますよ?言っていないことを、あたかも言ったような形で議論するということは、論評に値しないと思う」

と色をなして反論した。

「東京」社説は冷静、解説記事は誤った前提

   11月25日朝にフジテレビで放送された「新報道2001」でも、

「建設国債を日銀に全部買ってもらう」

という、やはり誤解を生む内容が書かれた説明用のボードが登場した。

   中でも「ちぐはぐ」なのが、東京(中日)新聞の11月22日の紙面。社説では、

「安倍総裁は日銀による国債の買いオペ拡大も求めた。これがメディアで『日銀の国債直接引き受け』と推測交じりに報じられ『財政赤字を日銀が賄うのか』という極端な議論に発展した」

と、事態の推移を冷静に報じているが、別の面に掲載された「経済 知りたいニャー 安倍氏の主張正しい? 『財政の規律失う』日銀などが批判」と題する解説記事では、

「国債の直接引き受けは、急激なインフレを招いた歴史の教訓から世界の各中央銀行でも原則として認められていない。政財界からも批判が上がり、安倍氏は21日、『日銀が直接買うという意味ではない』と発言の修正に追い込まれた」

と、「直接引き受け」発言があったという前提で書かれている。

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