2024年 4月 26日 (金)

福島第1原発で燃料プール冷却停止 「核燃料1533本」4号機の不安、今も

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   東京電力福島第1原発の免震重要棟で停電が発生した後、電気系統のトラブルにより1、3、4号機の使用済み核燃料プールの冷却設備がストップした。

   丸1日たってようやく全面復旧の見通しが立ったが、4号機の燃料プールには今も1533本の核燃料が保存されている。一歩間違えば、原発事故直後に直面した「核燃料溶融、放射性物質大量飛散の危機」につながったかもしれない。

社内規定の「65度」に達するまで約4日

民間事故調の報告書によると、4号機に懸念を示す意見が多かったという
民間事故調の報告書によると、4号機に懸念を示す意見が多かったという

   東電は2013年3月19日10時の会見で、前夜の停電は3、4号機の仮設配電盤に不具合が起きた可能性が高いと説明した。1~3号機の原子炉への注水設備は影響を受けていないが、1、3、4号機の燃料プールと共用プールの冷却ができなくなった。その後1、3号機は復旧し、16時30分からの2度目の会見で4号機は20時、共用プールは20日8時をめどにそれぞれ全面復旧予定と説明した。

   原因について東電は、「仮設配電盤を目視確認したところ、損傷はなかった」とするが、調査を進めている最中だという。冷却設備の復旧を優先させるため、故障したと見られる仮設配電盤につないでいた3、4号機と共用プールの冷却設備は別の配電盤に接続して対処する。仮設配電盤は、実はトラックに積まれて建屋の外に置かれている状態で使われていた。屋外使用可能な仕様だったようだが、「雨ざらし」で使用環境が過酷だったのは間違いない。

   大事に至らずに済みそうだが、燃料プールの冷却が一時ストップした事実は重い。特に4号機は、今もプール内に1533本の核燃料がある。1、2、3号機と比べてその本数は圧倒的に多い。実際に事故前の3月18日16時の温度は25度だったが、19日10時には30.5度と上昇。トラブル発生時から数えて、東電の社内規定の上限温度である65度に達するまでは4.52日と発表されていた。東電では時間的にある程度余裕があり、配電盤を修理するか、それが難しければ別の配電盤につなぐ処置を施せると見ていたようだ。実際には見通し通りに事が運びそうだが、万一いずれも不可能だった場合は「代替の注水手段」、つまり消防車両などでプールに直接水を入れることになっていたかもしれない。

   4号機の現状は、東日本大震災から2年にあたる2013年3月11日に放送された「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)で伝えられた。リポーターが建屋内に入り、最上階から燃料プールの水面を映した。その後2階まで下りてプールの真下に来た。プールの底は何十本もの鉄製の支柱を設置して耐震補強したうえ、コンクリートで固められている。東電の担当者は「壁にひびが入っていないか、強度が低下していないかを定期的に検査している」と説明していた。

民間事故調報告書「米国が『空だき』懸念していた」

   4号機は2011年3月15日に水素爆発を起こした当時、その行方が最も心配された。福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)の「調査・検証報告書」を読むと、燃料プールへの注水が不可能となり、核燃料がむき出しとなって破損、溶融してコンクリートと反応し大量の放射性物質を放出するという「最悪のシナリオ」が描かれていたことがわかる。

   同書によると、4号機の水素爆発により米国からはプールが「空だき」になっていないかとの懸念が寄せられたという。政府はその後プールに水が入っていることを自衛隊の空撮映像で確認したが、建屋の最上階にあるプールが構造的にもろいままであるのに変わりはなかった。久木田豊・原子力安全委員会委員長代理(当時)は「燃料が溶けて、さらに火災が起こってプールの底が抜けてバラバラっと燃料棒が落ちていく。それが最悪」とし、近藤駿介・原子力委員長(同)も「とくに余震が起こった場合、底が崩落し、水が漏洩し、注水停止状態になる」ことを怖れたとしている。菅直人首相(同)は退任後に「今回の危機では、使用済み燃料プールがもっとも怖かった」と振り返った。プールへの安定的な注水と、構造的な補強が緊急課題になっていたという。

   現在の4号機の耐震性については、東電の2012年8月30日発表の資料に書かれている。東日本大震災と同程度の地震が発生しても「使用済燃料プールを含め原子炉建屋の耐震性が十分であることを確認しました」とある。プール底部の補強だけでなく、プールの壁は厚さ140~185センチの鉄筋コンクリート製で、プールを支える壁も同等以上の厚さがあると頑丈さをアピール。年4回、建屋の傾きや外壁面の測定、目視点検、コンクリート強度確認を実施しているという。万一プールから水がこぼれたとしても、その水を受けるためのタンクがプール横に併設されていて、水はそのまま配管を通ってプールに戻る仕組みになっている。

   冷却システムも増強されているはずだが、今回のトラブルで、原発事故から2年以上が経過した今も燃料プールの冷却が失われる危険性と隣り合わせであり、「最悪のシナリオ」が完全に消え去ったわけではない現実を突きつけられた。

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