2024年 4月 27日 (土)

保育所に入れない! 親たちの「怒りの反乱」相次ぐ 「待機児童」完全解消は2020年?

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   認可保育所に入れない「待機児童」の親たちが、自治体に次々に不服申し立てをして、注目を集めている。認可保育園の整備が追い付かない行政への母親たちの怒りの反乱だ。政府も対策を打ち出しているが、完全解消は7年後とされており、規制改革会議で前倒しの議論も始まった。

杉並区は2.6倍の競争率

   2013年の2月から3月にかけて、東京杉並区、大田区、足立区、目黒区、渋谷区やさいたま市、東大阪市など各地で、親たちの異議申し立てが続いた。例えば杉並区の場合、2968人の入所希望に対し、区の認可保育所の募集枠は1135人。実に2.6倍の競争率だ。

   認可保育所は国の基準を満たす保育士や一定の居室、庭などが確保され、補助も厚いので、フルタイムで働くある母親の場合、月額5万円程度で入れるが、認可外に行かざるを得なくなったら10万円にもなるという。「共稼ぎを前提に住宅ローンを組んでいるので、払いきれない」といった悲鳴が聞こえる。

   認可外でも、東京都などが補助金を出す「認定保育所」はあるが、ビルの一室で庭がないなど、保育環境が認可保育所に劣る場合がほとんどで、自治体の補助があっても、認可保育所に比べれば割高。そんな無認可保育所でも、入れればまだ良い方という実態もある。

   待機児童は主に都市部で問題になっており、厚生労働省のまとめでは、2012年10月1日現在、全国で4万6127人と、前年より493人減っただけ。都道府県別では東京1万105人、大阪5488人、神奈川4052人など。

   育児休業制度の整備で出産後も働く女性が増えているのに加え、リーマンショック後の景気低迷で共働きが増えたほか、地価下落もあって都心でも住宅が買いやすくなったことで若い世帯が増えたことなどから、大都市部の保育需要が拡大膨らんだという事情がある。自治体の努力で保育所が増えると、諦めていた人が応募し、却って待機児童が増えるという悪循環も指摘される。

消費税分から7000億円を投じる

   待機児童解消への政策は一応、立てられている。2012年夏の「社会保障と税の一体改革」で、2015年度から保育の新制度が導入され、親の申請を受けて就労状況などで保育の「必要量」を判定し、これに応じて施設を選ぶことになる。新制度のために消費税増税分から年間7000億円の財源を投じて保育所整備などを進めることになっている。ただし、政府は、待機児童の解消には5年程度必要と見込んでおり、現在から考えると7年後の2020年ごろということになる。

   政府の対応をにらみながら、自治体独自の取り組みも注目される。一番の先進例が横浜市。2010年4月に全国自治体でワーストの1500人超の待機児童を抱えていたが、昨年春に179人まで減らし、今春でほぼゼロを達成したのだ。認可、無認可含め3年で1万人以上置保育所定員を増やすとともに、個別のニーズをくみ上げ、最適の対応を親と一緒に考える「保育コンシェルジュ」を区役所に置いた。フルタイムで働くのが前提の保育を、パートのひとにはそれに合ったメニューを考えるといったきめ細かい対応の成果だ。

政府目標は「今後2年間で解消」

   一連の親の異議申し立てを受け、緊急対策を打ち出す自治体もある。区の施設などを転用して認可保育所の定員を急きょ60人拡大(杉並区)、13年度補正予算で6億円余りを積み増すなど14年度までに定員を420人増やす(豊島区)などの動きが出ている。

   政府の規制改革会議でも議論になり、3月21日の会合で「待機児童を今後2年間で解消」との政府目標を提言する素案を打ち出した。ただ、保育士の数や建物・庭の面積など認可保育所の設置基準について「国の基準は融通が利かない。人口も面積も違う東京と北海道が同じ扱いだ」(猪瀬直樹都知事)といった不満を背景に、設置基準を緩和するというのが、規制改革会議の議論でも大きな柱だったという。

   先進例の横浜市でも、全ての需要を認可保育所で賄ったわけではなく、「駅周辺ビルの1室など便利だけど、まるでコインロッカーに預けるみたいで、子供の成長への影響が心配」(ある母親)との不満・不安もある。保育士が少なくて、保育中の事故も後を絶たない。安心して子育てできる環境への道のりはまだまだ険しそうだ。

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