2024年 4月 25日 (木)

「クソ左翼」の復興庁幹部、そこまで悪いか 憂鬱なる官僚の「本音暴言」に同情の声も

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   復興庁の水野靖久参事官(45)が、ツイッター上で市民団体や国会議員に対し「暴言」を吐いていたことが問題化している。報道を受け、菅義偉官房長官は2013年6月13日の記者会見で、事実確認の上で処分を行うとの見解を示した。

   特に批判が多いのは、「左翼のクソども」「虚言癖」といった中傷めいた発言だ。一方でつぶやき全体を通してみると、官僚としての率直な「愚痴」も多く、同情論も出ている。

根本復興相謝罪、処分の方針示す

問題となっている水野参事官のツイッター。すでにアカウントは削除されている
問題となっている水野参事官のツイッター。すでにアカウントは削除されている

   水野参事官は総務省出身、千葉県船橋市の副市長を経て、2012年8月から復興庁に出向している。原発事故からの復興施策を担当する法制班所属で、被災地復興に関する法整備などの担当者だ。国会質問に対する答弁作成や、被災者・自治体からの聞き取りなどに当たっていた。

   水野参事官は復興庁出向以前から、実名でツイッターを利用していた。その後、2012年10月にアカウント名を「ninja rider」という仮名に変更し、所属官庁や役職も伏せたが、「国家公務員」であることは隠していなかった。

   この水野参事官の「問題発言」を大々的に報じたのは、独立系メディアの「OurPlanetTV」と毎日新聞だ。特にOurPlanetTVはツイッターでの発言や復興庁への情報請求、また当人への取材などを元に、「被災者や議員へ中傷ツイート」を連発していた、と批判した。水野参事官は11日夜にアカウントを削除していたが、毎日新聞が13日朝刊で「復興庁幹部ツイッター暴言」と一面トップで報道、根本匠復興相が同日の衆院特別委員会で「発言が事実であれば不適切」と謝罪し、なんらかの処分を明言する事態に至った。民主党の高木義明・国会対策委員長も、「行政の責任者も含めて厳しく追及していかなければ」などと息巻く。

   いったい水野参事官はどのような「暴言」を吐いていたのか。元ツイートは削除されたものの、OurPlanetTVが発言記録を保存して公開している。

被災地議会を「余りのアレ具合」と嘲笑

「左翼のクソどもから、ひたすら罵声を浴びせられる集会に出席。不思議と反発は感じない。感じるのは相手の知性の欠除に対する哀れみのみ」

   報道で特にクローズアップされたのは、2013年3月7日のこの発言だ。この日、水野参事官は「放射線被ばくと健康管理のあり方に関する市民・専門家委員会」主催の集会に出席、政府側の代表として参加者から、市民の被ばく問題への対策を急ぐよう要求されていた。その直後に相手を裏で「左翼のクソども」と呼んでいたことになる。

   ほかにも、

「今日は懸案が一つ解決。正確に言うと、白黒つけずに曖昧なままにしておくことに関係者が同意しただけなんだけど、こんな解決策もあるということ」(13年3月8日)

というような問題の先送りを歓迎するとも取れるつぶやき、あるいは福島県川俣町に出張した直後の、

「今日は、田舎の町議会をじっくり見て、余りのアレ具合に吹き出しそうになりつつも我慢w」(12年11月15日)

といった発言が確認できる。

   また、答弁作成が回ってくるたびに「被弾なう」とつぶやいており、質問を行う議員に対しては辛辣な発言が目立つ。特に議員側からの質問通告の遅れに対しては、

「労働者の党が通告を出さないため、多数の労働者が深夜残業なう」(12年10月31日)
「20分の質問時間しかないのに29問も通告してくる某党代表の見識を問う」(13年2月6日)

などの皮肉が並び、中には「ドラえもん似の議員」(2013年3月12日)というような発言も。また安倍政権の現職大臣に対しても、「我が社の大臣の功績を平然と『自分の手柄』としてしまう某大臣の虚言癖に頭がクラクラ」(2013年2月6日)なるかなり際どい論評も見られる。

集会では参加者からヤジが飛ぶ

   「中傷」「暴言」などと大手メディアから一斉に叩かれた水野参事官の発言だが、一方でツイッターなどでは同情の声もある。たとえば「左翼のクソども」発言があった集会では、健康調査の対象となる放射線量の早期決定を参加者から求められ、

「決めなさいよ早く! 何ぐずぐずしてんのよ!」

とヤジられる場面がOurPlanetTV公開の動画から確認できる。また、「ふざけた調子」(毎日)などと批判されている国会質問への態度についても、

「公務員の給与を引き下げろと主張する某党の代表が本会議の通告を出さないため、退庁できない職員多数。今日だけで数千万円の残業代が浪費されたものと推測」(13年1月30日)
「部下の送別会だったのに、被弾して行けなかったよん」(13年3月23日)

といったつぶやきを見ていると、それが仕事とはいえ激務に追われる官僚の悲哀を感じさせる。ちなみに発言時間を見れば、朝は7時から、夜も9~10時、遅い日は11時ごろまで勤務していることもざら。休日を含め、多いときは週3回もの出張もこなしている。かなりの疲労やストレスが積み重なっていたであろうことがうかがえる。

   脳科学者の茂木健一郎さんもツイッターで、このように提言する。

「水野靖久参事官のツイッターの言葉は不適切だが、そこから見える、国会や国会議員と霞ヶ関との関係は、改善すべき点も多い。たとえば国会の質問の答弁を官僚が用意すること。ある程度は必要だろうけれども、現状は行きすぎ。もっと実質的な意味のある、建設的な仕事に霞ヶ関のリソースを振り向けるべき」
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