2024年 4月 26日 (金)

フィリピン、領有権問題で中国に立ち向かう すご腕の米法律家雇い国際機関に提訴

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   南シナ海の領有権を巡って攻勢を強める中国に対して、フィリピンは2013年1月、国連海洋法条約に基づき仲裁裁判所に提訴している。中国と領土問題を抱えるアジア各国のなかで、訴訟に踏み切ったケースはまれだ。

   この訴訟のフィリピン側代理人は、国家間の係争で実績のある米国の法律家だ。この人物は、過去にも「小国」を率いて「大国」に挑み、勝利した経験を持つ。

南シナ海をU字型に取り囲む「ナインダッシュ・ライン」

   フィリピン側を代表するのは米ワシントンの法律家、ポール・ライクラ―氏だ。2013年10月14日付の米ウォールストリートジャーナル(WSJ)電子版では、その経歴を詳しく紹介している。これまで担当した国際裁判では、対米国との訴訟でニカラグアを、対ロシアでグルジアを、対英国ではモーリシャスを、それぞれ率いた経験を持つ。母国との対決となった1980年代の対米訴訟では、米政府が、当時ニカラグアのサンディニスタ左派政権の転覆を図り反政府勢力に加担したのは国際法に違反するとの、国際司法裁判所の判決を勝ち取っている。

   フィリピンが主張するのは、中国が南シナ海で推進する「ナインダッシュ・ライン」の違法性だ。このラインは、中国が領有権を主張する西沙(英語名パラセル)諸島とインドシナ半島の間の海域からカリマンタン(ボルネオ)島まで南下し、そこから北上して南沙(英語名スプラトリー)諸島を取り込みながらフィリピンの西岸まで、アルファベットの「U」の字を描くようにぐるりと囲む。広大な海域を「中国領」に含むものだが、周辺国のフィリピンやベトナム、ブルネイ、マレーシアなどと領有権を争う島々が存在する。

   フィリピンは、ナインダッシュ・ラインが国連海洋法条約違反で、「自国の基線から12海里を領海、200海里を排他的経済水域(EEZ)」とする同法の規定は適用されず、中国の海洋権益として認められないと訴える。

   中国は2012年、西沙諸島の島に「三沙市」を設立し、中沙、南沙諸島をも管轄するとした。この島は軍用の空港も備えている。最近では中国人観光客が島々を訪れ、上陸することもある。

   南沙諸島ミスチーフ礁では1995年に建築物を建て、実効支配を始めた。ここはフィリピンのEEZ内にある。さらにフィリピン・ルソン島西方沖約200キロにあるスカボロー礁を巡っても両国は対立。2012年には中国当局が監視船を送り、フィリピン海軍と長期間にわたってにらみ合う事態になっている。2013年9月にはフィリピン国防省が、中国がコンクリートブロックを設置したと発表。ミスチーフ礁同様、施設を建設して実効支配を進める企てだと非難した。

「尊大な中国」を国際社会にアピールする機会になる

   裁判の期間についてライクラ―氏はWSJに、双方の言い分が対立している場合は3~5年を要するだろうと語った。仮に中国が訴訟に敗れた場合でも、知らん顔を決め込み着々と実効支配を進める可能性は否定できない。だがこれまでの国際裁判では95%以上の割合で、当事国が裁定に従ってきたという。仲裁裁判所の判断を無視すれば、国際社会から不信が高まる。中国といえども、そう簡単に国際ルールを踏みにじれないだろうとの計算だ。

   首都マニラ郊外に住む30代のフィリピン人男性はJ-CASTニュースの取材に、「今回の提訴は、中国に対する抗議の象徴的な姿勢」と政府の方針を評価した。軍事力や経済力では中国が圧倒し、このまま南シナ海の島々への影響力を強化されれば訴訟に勝っても実質的には得るものがない。それでも勝訴により、道徳的に有利に立てることには意義を見いだす。

   米の敏腕法律家が「チーム・フィリピン」を率いる点について、「フィリピンの人々は支持していると思いますが、それほど大きなニュースになっているわけではありません」。裁判の行方が、中国の海洋政策に大きな影響を与えないだろうと人々は少々悲観的にとらえているようだ。半面「国際社会に向けて、中国がいかに尊大で、弱者をいじめるような存在かをアピールする機会にはなるでしょう」と話した。

   英フィナンシャルタイムズ電子版は2013年5月29日付の記事で、フィリピンの対中訴訟を「勇敢か、それとも向こう見ずか」と紹介した。記事の終盤では、尖閣諸島(沖縄県)を巡って中国と対立を続ける日本をはじめ、類似の問題を抱えるインドネシアとベトナムを名指しして、「フィリピンのように、仲裁裁判所を通じて自己の立場を主張するだけの勇敢さを持ち合わせていないのは情けない」と皮肉交じりに論じている。

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