2024年 4月 18日 (木)

「安倍政府打倒は朝日の社是」安倍首相が発言 そんな「社是」本当にあるの?

   安倍晋三首相が2014年2月5日に行われた参院予算委員会で「『安倍政権打倒は朝日の社是である』と(聞いている)」と話す一幕があった。政治評論家の故三宅久之氏から聞いた話で、朝日新聞の幹部が発言したのだという。

   皮肉まじりの異例の発言は委員会でも笑いを誘ったが、これに対し、朝日新聞社は、こうした社是および幹部の発言は「一切ありません」と否定している。

「私もそういう新聞なんだなと思って読む」

安倍首相が異例の発言
安倍首相が異例の発言

   発言のきっかけは、脇雅史議員(自民)からの指摘だ。脇議員は安全保障戦略の基本理念である「積極的平和主義」が中国や韓国などの外国で「武力を使ってでも平和を達成する」と誤認されることに危機感を示した上で、朝日新聞が昨年12月に掲載した社説を取り上げた。積極的平和主義について「憲法9条による縛りを解き、日本の軍事的な役割を拡大していく考え方のこと」と断言しているとして問題視するなどし、首相に対して事実とあまりにも異なる場合は放置せずに、しっかり説明する必要があると訴えた。

   これを受け、安倍首相は「新聞社が意見を明確に主張するのはいいことであり、どんどん批判していただきたい」と話した上で、冒頭の話を持ち出した。「かつて三宅久之さんから聞いた話ではありますが」と前置きし、「朝日新聞の幹部が『安倍政権打倒は朝日の社是である』と」と述べ、「これが社是であることは結構」と続け、「私もそういう新聞なんだなと思って読む」と挑発するようなコメントをし、笑いを誘った。

   同じ社説の中で、脇議員が言及していた「『我が国と郷土を愛する心を養う』という一文が盛り込まれた。過剰な愛国心教育につながる危うさをはらむ」という一節に対しては、教育基本法に書かれていたことを持ってきただけに過ぎないとして、「我々は(ナショナリズムを)煽ることはしない。煽る人、煽る新聞社はあるかもしれないが」と皮肉を込めて否定した。「我々はしっかりとファクト、責任感で対応していきたいし、しっかりと真実を礼儀正しく静かに国民の皆様に分かりやすく伝えていきたいと考えている」と結ぶと、議員らから大きな拍手が起こった。

首相、堪忍袋の緒が切れた?

   大胆ともいえる安倍首相の「社是」発言だが、そもそもこのエピソードは、2012年に刊行された「約束の日 安倍晋三試論」でも紹介されていた。著者である小川榮太郎氏は冒頭で、三宅氏から聞いた話として下記のように綴っている。

「朝日新聞の論説主幹の若宮啓文と会った時にね、『朝日は安倍というといたずらに叩くけど、いいところはきちんと認めるような報道はできないものなのか?』と聞いたら、若宮は言下に『できません』と言うんですよ。で、『何故だ?』と聞いたら『社是だからです』と。安倍叩きはうちの社是だと言うんだからねえ。社是って言われちゃあ……。」

   ただしこのエピソードに首相本人が言及するのは異例であり、時事通信と読売新聞が報じたこともあってインターネット上でもかなりの注目を集めている。「首相も堪忍袋の尾が切れたのですね」「マスコミは好き勝手に書いて責任を取らないが、政治家は責任を取らされる。そりゃ、文句の一つも言いたくなるだろう」などと首相に同情する声がある一方、「総理として、そんなこと言っていいの?」「報道弾圧にも限度ってものがあるだろ」などと問題視する意見もあり、反応はさまざまだ。ちなみに若宮氏が論説主幹だったのは2008年まで。すでに退職している。

朝日は「そんな社是はない」と否定

   朝日新聞社はどのように受け止めているのだろうか。同紙広報部は「当社幹部が、政治評論家の三宅久之氏に対し、『安倍政権の打倒は社是である』と発言した事実は一切ありません」ときっぱり否定。安倍政権打倒を社是とした、という事実も「一切ありません」と重ねて否定した。また、委員会で指摘された「事実誤認」および安倍首相の発言について見解を聞いたところ、「読者にお伝えしなければならないと判断した事柄は当社の紙面や電子版などを通じて報道することが当社の基本姿勢ですので、それ以外で論評することは差し控えます」とのことだった。

   念のため実際に定めている社是があるのかも質問したが、回答は得られなかった。同社OBに聞いたところ、「社是」など聞いたことがない、そんなものないはず、とのことだった。ちなみに社員手帳の冒頭には「綱領」が掲げられ、そこには「正義人道に基いて国民の幸福に献身し、一切の不法と暴力を排して腐敗と闘う」「真実を公正敏速に報道し、評論は進歩的精神を持してその中正を期す」などと記されているそうだ。

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