2024年 4月 30日 (火)

1兆円「もんじゅ」で放射性廃棄物の低減は可能なのか 「夢の技術」? それとも高速増殖炉の延命策?

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   政府が原発を「重要なべースロード電源」と位置づけた「エネルギー基本計画」の原案が波紋を広げている。安倍政権は自民、公明両党の議論を経て、3月中にも基本計画を閣議決定する方針だ。

   基本計画をめぐる一連のマスコミ報道で見落とされがちなのが、核燃料サイクルと高速増殖原型炉「もんじゅ」の扱いだ。「放射性廃棄物の減容化・有害度低減のための技術開発」と位置づけを変え、いわば格下げした形なのだ。果たして放射性廃棄物の低減など、「もんじゅ」にできるのだろうか?

「増殖」の二文字が消えた

   前回(2010年)の同計画で、高速増殖炉は「2025年頃までの実証炉の実現、2050年より前の商業炉の導入に向け、研究開発を推進する」としていた。今回の基本計画の原案は原子力政策について、「もんじゅ」の活用を念頭に「高速炉や加速器を用いた核種変換など、放射性廃棄物中に長期に残留する放射線量を少なくし、放射性廃棄物の処理・処分の安全性を高める技術等の開発を国際的なネットワークを活用しつつ推進する」と明記している。ここで「高速炉」との表現で、「増殖」の二文字が消えた点が注意を要する。

   これは何を意味しているのか。文部科学省によると、「もんじゅ」は発電だけでなく、「将来の放射性廃棄物の体積を原発の使用済み核燃料の約7分の1に減らすほか、有害度(天然ウランと同等の放射線量になるまでの期間)を約10万年から約300年に減少させる研究ができる」という。

   原発で燃やした使用済み核燃料を再処理した後に残る高レベル放射性廃棄物には「高寿命核種」が含まれている。「もんじゅ」を利用して高速中性子の燃料照射試験を行うことで、高寿命核種を短寿命核種や非放射性核種に分離・変換することが可能だというのだ。

   これを「減容化」と呼ぶが、先進各国が高速増殖炉の開発から撤退する中、「放射性廃棄物の減容化に関する照射試験が工学規模で可能なのは、世界でも『もんじゅ』だけ」と、文部科学省関係者は胸を張る。米国もフランスも高速増殖炉の開発からは撤退したが、「放射性廃棄物対策を主眼にした研究開発は継続中」という。

技術者の力を結集して、数十年かけて実現

   放射能の低減に10万年かかる長寿命核種を本当に300年に短縮できるなら、放射性廃棄物の最終処分の方法も変わってくるだろう。自民党の高市早苗政調会長は「高レベル放射性廃棄物の減容化、毒性期間の短縮化を実現できるか、党内で検討させている。これを活用しない手はない」などと、これまで発言している。

   果たして、そんな「夢の技術」は可能なのか。「もんじゅ」の研究・開発を進める日本原子力研究開発機構の野村茂雄理事は自民党の資源・エネルギー戦略調査会で「高速炉の中性子を用い、長寿命で有害度の高い核種の変換は実現可能」としながらも、「分離・変換技術は、様々な国や分野の研究者、技術者の力を結集して、数十年かけて実現する技術だ」と述べ、将来的な「目標」であると説明した。

   かつて高速増殖炉は、核分裂しにくいウラン238を核分裂が容易なプルトニウム239に変換しながら発電し、消費したエネルギー以上の核燃料を生み出す「夢の原子炉」と期待された。しかし、海外ではフランスが原型炉から一歩進んだ実証炉を開発したが、経済性に乏しく実用化が困難なことから閉鎖。米国、ドイツ、英国なども開発から撤退した。トラブル続きの高速増殖炉の運転再開を目指す先進国は日本だけで、積極的に開発を進めるのは他にロシア、中国、インドといった途上国ばかり。この事実が、高速増殖炉の置かれた立場を如実に物語っている。

   小泉純一郎元首相の脱原発発言で、放射性廃棄物の最終処分の困難さがクローズアップされている。そこで改めて登場したのが今回の「減容化」というわけだ。「減容化など、現実には数十年かけてもできるかわからない。文部科学省が狙う『もんじゅの延命策』に過ぎない」との声は、自民党内からも聞こえる。「もんじゅ」は1980年から2013年までに9830億円と1兆円近い予算が使われたが、政府内にも「国民に説明できるだけの成果は何ひとつ上がっていない」(財務省関係者)など、厳しい批判がある。

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