2024年 4月 29日 (月)

ガス大手3社、地域独占の終わり 水素ステーションや発電への対応急ぐ

   東京ガス、大阪ガス、東邦ガスのガス大手3社が、2017年に予定されるガス小売りの全面自由化を控え、「総合エネルギー企業」に向けた対応を急いでいる。

   地元の企業や家庭を相手にほぼ独占的に事業展開できた時代が終わると見られるためだ。政府は新規参入を促すため、各社がガスを輸送する「導管」と呼ばれるインフラを各社本体から分離する方策も検討している。その議論次第では経営に大きく影響することも、3社をそわそわさせている。

東京ガスが練馬区に商用水素ステーションを開所

「お公家集団」は「自由化」対応に必死(画像は東京ガスのホームページ)
「お公家集団」は「自由化」対応に必死(画像は東京ガスのホームページ)

   2014年12月18日、東京ガスは関東地方で初めての燃料電池車(FCV)向けの商用水素ステーションを、東京都練馬区に開所した。トヨタ自動車のFCV「MIRAI(ミライ)」が、12月15日に一般向けに発売されたのに合わせた。東京都内には「実証実験」中の水素ステーションは数カ所あるが、市販車が使える商用ステーションは、全国でも産業ガス大手の岩谷産業が手がける兵庫県尼崎市と北九州市の2カ所のみ。東京ガスは既存の天然ガススタンドと併設することで維持管理コストを低減。「究極のエコカー」と呼ばれるFCVの燃料供給拠点をいちはやく設けることで、他のエネルギー企業の先手を打った格好だ。「水素社会がいつ来るか分からないが、来てからでは遅い」(東京ガス幹部)と前のめりだ。

   東京ガスの取り組みはもちろん、水素ステーションだけではなく、電力事業の拡大もその一つだ。最近の話としては、神戸製鋼所が栃木県真岡市に建設を予定する、液化天然ガス(LNG)を燃料とする火力発電所の電力を全量買い取ることを決めた。2019年度の完成を目指しており、2機とも稼働すれば計120万キロワットに達する。

石炭火力発電所建設に大阪ガスも参加

   電力事業に意欲を見せるのは大阪ガスも同様だ。山口県でJパワーと宇部興産が手がける石炭火力発電所建設に大阪ガスも参加した。関西地方の現在のガスの顧客に対して電力を販売する準備も進める。2016年度に電力小売り、2017年度にガス小売りが予定通り全面自由化されれば、「家庭向けにガスと電力のセット販売」が可能になる。大きなビジネスチャンスでもあるが、攻め込まれて顧客を奪われかねないピンチでもある。大阪ガスの社内では、セット販売の売り込み方の研究が進められているという。

   名古屋市など中部圏で都市ガスを供給する東邦ガスは、特定地区内で熱と電気を一括管理するシステムを提供する計画を進める。まずモデル事業として、名古屋市港区の同社などの工場跡地に「スマートシティ」(環境配慮型都市)を、2017年をめどに建設する。地区内には商業施設や集合住宅、ゴルフ練習場などがあり、消費するガスや電力を「エネルギーセンター」と呼ぶ設備が制御する。

政府が検討する自由化を警戒していることが背景に

   ガスコージェネレーション(熱電併給)や太陽稿発電などを活用し、省エネを極める運用を目指すという。「地域まるごと東邦ガス」の成功事例とさせたうえで、他地域にも展開させたい考えだ。

   ガス大手3社が「総合エネルギー企業化」を急ぐ背景には、政府が検討する自由化を警戒しているからに他ならない。ガス事業は地方によっては公営も存在し、大手3社も各地で「お公家集団」とも揶揄される緩さが実態だ。ライバルと競い合うという経験をあまり積んでいないからだ。こうした中、社風が似てなくもない電力会社と戦うだけならまだしも、新規参入企業が大手3社の「導管」をできるだけ自由に使えるようにする制度設計を政府が検討しているおり、尻に火がついている。大手3社は「メンテナンスが必要な導管を開放すると供給不安が起きる」と必死のロビイングで導管分離撤回を目論むが、その行方は見通せない。

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