2024年 4月 26日 (金)

NHKも特集した「預金封鎖」 お金引き出せなくなる悪夢は襲ってくるのか

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   戦後の日本経済を襲った猛烈なインフレーションを抑える目的で施行された、といわれる「預金封鎖」が再び発動されるのではないか――。そんな議論がまことしやかに広がってきた。

   なにしろ、国の借金は2014年12月末時点で約1030兆円。国民一人あたり811万円に達し、国内総生産(GDP)に占める割合は231.9%にまで膨らんだ。対GDP比はすでに、「預金封鎖」が施行される前(1944年度末)の204%をはるかに超えているのだ。

預金封鎖の狙いは「財産税だった」

近い将来、「預金封鎖」が発動される可能性は「ゼロではない」?
近い将来、「預金封鎖」が発動される可能性は「ゼロではない」?

   「預金封鎖」が話題になっている。

   NHK「ニュースウオッチ9」(2015年2月16日放送)では、預金封鎖によって起った国民生活の激変ぶりを、大阪市立大学名誉教授の林直道さん(91)が証言。さらにNHKが政府への情報公開請求によって入手した当時の証言記録をもとに、預金封鎖の「真の目的」に迫るという内容だった。

   政府は戦時中、国民に国債の購入を促して大量に発行した。その結果、国の借金は急増。終戦前の1944(昭和19)年度末には対GDP比204%にまで膨らんだ。

   敗戦直後、物資や食料が不足している日本を猛烈なインフレが襲い、国の財政は危機的状況に瀕した。政府は借金の返済原資を確保しようと、国民がもつ10万円超の預貯金のほか、家屋や田畑、株式など幅広い資産に最高90%を課税した。それが財産税だ。敗戦による国の借金を国民に負わせようとしたわけだ。

   突然の通告で国民生活はどうなったのか――。当時22歳の学生だった林直道さん(91)は、預金封鎖でお金が引き出せなくなり、手持ちのお金が不足したことで、ただでさえ不足していた食料がますます手に入りにくくなり、川の堤防に生えている草をゆがいて、わずかなご飯とともに食べたこともあったと語った。

   一方、預金封鎖は当初、貧困にあえぐ国民を救済するため、流通する貨幣の量を強制的に減らしてインフレを抑えるのが目的とされてきた。加えて、番組では預金封鎖の「もうひとつの狙い」が、「財産税を課税するためには国民の資産を把握する必要があった」と解説している。

   つまり預金封鎖は、銀行の預金を一定期間「凍結」して資産を把握。それに課税する措置ということのようだ。

   この放送後、インターネットではさまざまな議論を呼んでいる。提言型ニュースサイトのBLOGOSには、金融アナリストの久保田博幸氏が「預金封鎖と政府債務の削減」と題して取り上げ、また米国の投資顧問会社に勤める広瀬隆雄氏は「唐突感」があるとしながらも、「キターッ NHK、預金封鎖を語る(笑)」と題して考察した。

   インターネットの書き込みにも、

「自分達(政治家、官僚)の失敗のツケを国民に押し付けるつもりだな!」
「公共事業もうやめぇ。海外に金をばらまくのもやめや。他人の金をあてにするな」
「ん、、、消費税を上げるためのプロパガンダか? 」
「銀行から預金が引き出せなくなるとか最悪だね。この先そんなことが起こってもおかしくないのかぁ」
「歴史は繰り返すと言いますからね」

といった声が寄せられている。

可能性は低いが、ゼロではない

   戦後の国民生活の困窮という犠牲を払い、一たんは改善した国の財政だが、バブル崩壊以降に繰り返された財政出動と、少子高齢化の進展による社会保障費の増大で「国の借金」は再び急増。2015年3月末には1100兆円に迫ろうとしている。

   時世が違うとはいえ、国の借金がみるみると膨らんでいることに変わりはない。それでも多くのエコノミストらは「預金封鎖」の可能性は限りなく低いとみている。

   とはいえ、国際金融アナリストの小田切尚登氏は、「預金封鎖が現実に起る可能性は低いですが、ゼロではないですね」と話す。

   「たしかに、すぐにも金利が急上昇する(国債が暴落する)可能性は考えにくいです。しかし、たくさんの国債が発行できるのは、預金がいわば担保としてあるから。つまり、何かあったら(預金に)手を付けるということです」と説明。「(安全は)絶対ではないということを知っておくべきです」と、警鐘を鳴らす。

   もともと、日本人は株式や債券よりも安全・安心な預金を好む。日本銀行の家計の金融資産統計などによると、2014年9月末時点の家計の金融資産総額は1654兆円。一方、個人預金の残高は約418兆円(外貨預金を除く)にのぼり、ほぼ半分にあたる。

   ただ、預金封鎖が発動されるきっかけはわからない。株式や債券、また海外投資などに預金が急速にシフトすることで銀行に取り付け騒ぎが起こるかもしれないし、「(国債の保有割合が)わずか5%とはいえ、外銀などが何かのきっかけで大量に売り浴びせれば、それが引き金になることもあり得ないことではないのです」(小田切氏)。

   では万一、預金封鎖が発動されたら、最も貧乏くじを引くのはどんな人だろう――。預金の多い人ほど多くの預金が減るのだから、お金持ちは預金封鎖に備えて、あらかじめ海外に資金を動かしてしまう可能性がある。

   そうなると、いざという時のため、子どものため、将来のためといって、せっせと蓄えているような人、たとえば老後資金を溜め込んでいるような人が最も貧乏くじを引くことになるのかもしれない。

   もっとも、「預金封鎖」は借金から逃れる劇薬のようなものだ。ソフトランディングするには、比較的緩やかなインフレのほうが好ましいという見方も有力だ。物価が上がれば、借金の返済は楽になる。アベノミクスも、借金の対処法としてインフレを念頭に置いているのは間違いない。

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