2024年 4月 16日 (火)

地上300メートルANA機にレーザー照射の謎 市販のものではそんな威力はない?

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   大阪・伊丹空港で全日空(ANA)の旅客機の操縦席付近に地上からレーザー光が照射されていた事件で、ANA機が地上から300メートル付近に差しかかったときに狙われたことがわかった。

   レーザー照射は、目に当たると一時的に視覚が奪われる恐れがある、非常に危険な行為。操縦していた機長らに当たり、あわや大惨事につながった可能性が指摘されている。

  •  300メートル先から「超強力」レーザー光が・・・(写真は14年1月編集部撮影)
    300メートル先から「超強力」レーザー光が・・・(写真は14年1月編集部撮影)
  •  300メートル先から「超強力」レーザー光が・・・(写真は14年1月編集部撮影)

どこからどのように照射されたのか・・・

   事件が起こったのは、2015年10月17日18時50分ごろ。松山発伊丹行きのANA1648便ボーイング737型機(乗員乗客107人)が、大阪府豊中市の伊丹空港から南東約4キロメートル地点の上空約300メートル付近で着陸体勢に入ったとき、緑色の光線がコックピットの窓にあたったことに操縦士が気づいた。

   幸い、操縦士の目などに異常はなく、1648便は予定通り約5分後に伊丹空港に着陸。ケガ人などもなかった。

   また11月15日夕には、伊丹空港に着陸しようとした日本航空(JAL)の旅客機の操縦席付近にもレーザー光が照射されていたことも判明した。このときも運行に支障は出ておらず人的被害もなかったが、空港周辺では同様のケースが4月以降に数件確認されているという。いたずら目的か業務妨害かは不明だが、頻繁に起っていたようだ。

   ANAは国土交通省大阪空港事務所に報告するとともに大阪府警に相談。府警は威力業務妨害容疑を視野に捜査に乗り出している。

   今のところ、どこからどのように照射されたのかは特定できていないが、飛行中の機体に空中からレーザー光を当てるのはむずかしく、ビルや地上から照射されたとの見方が有力。ANAは「警察の捜査がはじまっており、詳細はお話ししかねます」というが、そのうえで「着陸態勢に入っているときだったので、滑走路に向かって一直線になっている状態でした。進行方向の地上側、空港ターミナルが目に入っていた状況であったといえます」と話す。

   一方、犯行に使われたレーザー光を照射する機器(レーザーポインターなど)は、出力が高くなるほど明るくなるので、暗い場所での視認性も上がる。最近ではプレゼンテーションや教育現場で、書き示された図表やプロジェクターで表示した映像などを指し示すための「指し棒」として利用されている。また高出力になると、暗い場所では散乱光による綺麗なレーザー光線の軌跡が見られるので、業務用としてショーやコンサートなどでも利用されている。

   その半面、高出力になるほど、目に当たったときのトラブルも深刻化する。

高出力のレーザーポインターの製造・販売は違法

   レーザーポインターを使ったとみられる照射事件はこれまでもたびたび起っている。1997年、プロ野球・大阪ドーム球場での試合でヤクルトスワローズの吉井理人投手の目の付近にレーザーが当てられるという事件が発生。サッカーでは2013年のワールドカップブラジル大会・アジア最終予選の対ヨルダン戦で、ゴールキーパーの川島永嗣選手などに観客席からレーザー光とみられる緑色の光線が照射された。

   さらに競馬では、競走馬の順位を操作しようと目論んだ観客が競走馬を狙ってレーザーポインターを使用した疑惑が起こり、コンサートでも2008年に歌手の松田聖子さんに向けて照射されたりしている。レーザー光が子どもの目に当たり視力が低下する事故やトラブルも相次いだ。

   こうした問題を受けて、国は消費生活用製品安全法を改正。2001年から規定以上の高出力のレーザーポインターの製造や輸入、販売を禁止した。

   経済産業省・製品安全課によると、レーザーポインター(携帯用レーザー応用装置)は、主に玩具として販売されている「クラス1」と、プレゼンテーション用として使われる「クラス2」が販売されている。クラス1は、おおむね0.2ミリワット(mW)前後の出力で、これは100秒間瞬きせずに直視しても問題ない程度。クラス2は、1mW未満の出力で、0.25秒間未満の直視は問題ないとされる。

   製造・輸入、販売には技術基準への適合性義務を負い、かつ製造・輸入事業者としての届け出が必要となるほか、製品は第3セクターの検査を受け、PSCマークの認定が必要になる。これより威力の強い、高出力のレーザーポインターの製造・販売した場合は違法となり、経産省が回収を命じることができる。

   伊丹空港での事件について、経産省は「(クラス2以上の製品が市場に)完全にないとは言いきれませんが、市販のものが、300メートル先からの照射がパイロットの目くらまし効果になるほど威力のあるものとは考えづらいです」と話す。

   違法レーザーポインターの可能性も否定できないという。

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