うわさの「火元」は安倍首相 「日銀の外債購入」はあるか

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   日銀の外国債券購入論が、市場関係者らを賑わせている。日銀が返済不要の財政資金を供給する「ヘリコプターマネー」と並ぶ奇策だが、金融市場の動向によって、現実味を帯びるとの観測もある。

   この話の「火元」は、誰あろう、安倍晋三首相だ。2016年9月5日夜、中国・杭州で開かれていた主要20か国・地域(G20)首脳会議(サミット)閉幕後の記者会見で、円高の影響に関連して「日銀による外債購入が為替介入を目的とする場合は日銀法上、認められていない」と日銀の外債購入に言及した。もちろん、購入を否定する脈絡で、この後、「金融政策の具体的な手法は日銀に委ねるべきと考えており、私は黒田(東彦)総裁の手腕を信頼している」と、日銀に口出しはしない姿勢を示してはいるが、わざわざ「外債」の単語を口にしたことを奇異に感じた向きも多かった。

  • 中国・杭州で開かれたG20での発言が市場関係者の注目を集めている(写真は16年8月3日撮影)
    中国・杭州で開かれたG20での発言が市場関係者の注目を集めている(写真は16年8月3日撮影)

市場に疑心暗鬼

   この発言を引き出した記者側の質問は「首相の経済顧問が、円高の影響がアベノミクスに与える影響を懸念している」というものだった。この「経済顧問」は、首相ブレーンで内閣官房参与の浜田宏一・米エール大名誉教授だとみられる。浜田氏はこれより前、通信社の取材に「日銀が外債を買うことも選択肢」と発言。15日付「日経」朝刊紙面も、国債購入の限界が来るとの議論に関連して「限界論に耳を傾けるなら日銀が発行残高の多い外債を買えばいい。円安効果も期待できる」と語ったと報じている。

   安倍首相の杭州での発言は、浜田氏の考えを打ち消す狙いという見方の一方、「円安誘導」でなく「金融政策」目的として実施するための布石と受け止める向きもあり、市場に疑心暗鬼を生じている。

   外債を買うアイデア自体は、「量的緩和で遠からず買う国債がなくなる」と言われる中、市場に資金を供給する手法の幅を広げるという金融政策としての側面がある。ただ、浜田氏の指摘の通り、円安誘導効果もある。具体的に日銀が外債を買うとは、金融機関などが保有する外債を円建てで買い取るか、ドル建てで買い取って必要なドルを外国為替市場で調達することだが、どちらにしても円売り・ドル買いにつながり、円高を抑える(円安に誘導する)方向に働くのだ。

   もちろん、日銀法は、為替市場の安定を目的とした通貨の売買は国(財務省)が行い、日銀はその事務を取り扱うだけと規定しており、円安効果を狙った外債購入は同法に抵触しかねない。だから日銀は、「金融政策は為替安定が目的ではない」(中曽宏副総裁の8日の講演)と、外債購入を否定する。それでも、こうした議論が市場でやかましいのは、言うまでもなく20、21日の日銀の意志決定機関、金融政策決定会合で、黒田総裁の下での金融緩和の「総括的な検証」を行うことが背景にある。

「金融緩和の行き詰まり感の反映」との指摘も

   同会合では、マイナス金利の「深掘り」、つまり、マイナス金利のさらなる引き下げを軸に、長短金利差を広げる(購入する国債を短期にシフト)といった方向で議論されるとの観測が強まっている。ただ、今回の決定会合で実際の政策変更があるか、今後の課題として先送りするかは、ギリギリまで市場動向などを見極めるとみられる。

   外債購入については、今回の決定会合で実施する可能性は、まずないというのが常識だが、円相場が円高方向に振れれば、市場に期待が高まる可能性はある。

   日銀が否定するまでもなく、先のG20首脳宣言にも、「通貨の切り下げ競争の回避」が明確にうたわれたように、外債購入は「日銀がいくら金融緩和の一環だと強弁しても、諸外国からの批判は免れず、実施は困難」(エコノミスト)というのが、大方の見方だ。とはいえ、「為替相場に左右されず、毎月、一定額の外債を購入するといった形であれば、あくまで市場への資金供給の一環と説明することもできる」(日銀関係者)との指摘もある。

   「ヘリコプターマネーにしろ、この外債購入にしろ、筋がいいとは思えない政策が次々に話題になるのは、金融緩和の行き詰まり感の反映」(大手紙経済部デスク)とも指摘される。黒田日銀の「サプライズ路線」が、市場のゆがんだ期待を高めているのかもしれない。

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