高齢社会が進み、寝たきりの人がますます増え、医療費は高騰し、やがて社会は立ち行かなくなる。そうした暗い予測が多いなか、日本慢性期医療協会の武久洋三会長は2017年2月16日、東京で開かれた医療関係者の研究会(主催・医療介護福祉政策研究フォーラム)で、「日本の寝たきりを半分にしよう。できる」と訴えた。入院日からのリハビリを武久さんは、日本に(人口比で)英国の3倍、米国の5倍、スウェーデンの10倍もの寝たきりの高齢者がいるのは急性期病院の低栄養・低リハビリが主因と指摘した。急性期は処置が終わって数日なのに、日本は他国の5倍以上の入院日数だ。病院の半数は医師の指示が週1回以下しかなく、医療の内容や必要性が疑われるが、国の政策もあり、長期入院が認められている。武久さんは経営する徳島市の病院を始めとする慢性期病院の調査を紹介した。急性期病院から転院した患者の多くは脱水、低栄養で、血液検査値に異常がある。しかし、紹介状にその旨の記載はわずか7%。専門医は検査のための絶食や安静を求め、大量の薬剤投与の一方、患者の体の状態に気づいていない。安価な薬の点滴で回復する脱水、低栄養などが改善されないままのため、感染症、循環不全、腎不全などを併発し、医療費を押し上げている。入院日からのリハビリ、嚥下(えんげ=飲み込み)・排せつリハビリも急性期病院でほとんど行われていない。転院してきた中枢神経病患者30人に摂食・嚥下訓練をしたところ、経鼻栄養が63%から7%に激減し、口からの食事が14%から83%に増えた。看護師の手間を減らす目的もあり、多い病院だと3、4割の患者は尿道にバルーンカテーテルを付けて転院してくる。14%がカテーテル、50%がおむつだった寝たきりか、その寸前の患者111人に膀胱リハビリをした結果、バルーン0、おむつ3%まで減った。武久さんによると、国民は、以前は預かってくれる病院を、今は適切な治療で日常に戻してくれる病院を求めている。病院はそれに対応する必要があり、急性期の患者も治療できる慢性期病院が医療の要、と力説した。(医療ジャーナリスト・田辺功)
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