2024年 4月 25日 (木)

馬がこれほど賢い動物だったとは 人間の心を読み利用する知恵者

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   犬や猫とともにずっと人間の伴侶を務めてきた馬。「馬耳東風」「馬の耳に念仏」などと「お馬鹿さん」の代名詞にされてきたが、実は犬に勝るとも劣らない賢い動物であることが最新研究で明らかになった。

   人の感情を読み取り、利用する知恵にたけているという。神戸大学と英サセックス大学の研究を紹介しよう。

  • 馬の賢さが凄すぎる
    馬の賢さが凄すぎる
  • 馬の賢さが凄すぎる

人間をエサの隠し場所に巧みに誘導する

   馬が自分にできないことを人間にさせる知恵があることを明らかにしたのが神戸大学の研究だ。国際動物学誌「Animal Cognition」(電子版)の2016年11月24日号に発表した。神戸大学の12月9日付発表資料によると、研究では、馬には届かず人間には届く場所にエサを隠す方法で、馬がエサを食べるためにどうやって人間に助けを求めるかを検証した。実験は、同大学馬術部の放牧場で、馬術部の馬8頭とその飼育担当者である学生の協力を得て行なった。

   実験1では、まず馬が届かない場所に2つのバケツを置き、そのうちの1つにエサ(ニンジン)を隠した。その後、この状況を知らない飼育担当者が来た時、飼育担当者に対し馬がどんな行動を起こすかを観察した。その結果、馬は担当者の近くに留まり、飼育担当者を「見つめる」、鼻づらで「触る」「押す」といった行動をとり、エサのあるバケツに誘導した。この行動は、エサを隠さずに実験を行なった場合よりも多かった。

   この結果から、馬は自分では解決できない課題に直面すると、人間にシグナルを送って助けを求めることが明らかになった。

   この結果をふまえ、さらに高度な実験2を行なった。飼育担当者が見ている時と見ていない時の両方でエサを隠した。そして、飼育担当者の知識状態(エサの存在を知っているか否か)に応じ、馬の行動がどう変わるか観察した。その結果、飼育担当者が見ていた場合より、見ていなかった場合に、より多くシグナルを送ることがわかった。それぞれの飼育担当者がエサの隠し場所を知っているどうかまで記憶し、相手に応じて行動を変える「知恵」を持っている。

   研究チームのリングホーファー萌奈美・学術研究員は、発表資料の中で「2つの実験を通し、馬の人間に対するコミュニケーション方法が明らかになりました。さらに、個々の人間の知識状態に応じ行動を柔軟に変える、高い社会的認知能力を持っている可能性があります」とコメントしている。

馬が「怒った人間の顔」を左目で見る理由は

   次に、「馬は人間の感情を読み取っている」という英サセックス大学の研究だ。生物学誌「Biology Letters」(電子版)の2016年2月10日号に発表した。同日付のサセックス大学のプレスリリースによると、研究チームは5つの乗馬用厩舎で合計28頭の馬に次のような実験を行なった。

   会ったことがない2人の男性の「笑った写真」と「怒った写真」をそれぞれ1枚ずつ、合計4枚を馬に見せて反応を調べた。写真は実物大の大きさで、いきなり馬の顔に突きつけた。馬が動揺しケガをしないよう、一人が馬を押さえ、一人が写真を見せた。馬には心臓モニターを装着、心拍数の変動を検査した。

   その結果、馬は「笑った写真」にはあまり反応しなかったが、「怒った写真」には嫌悪の反応を示した。心拍数が急上昇し、顔を動かして写真を左目でしっかり見つめた。研究者の1人、エイミー・スミス博士は、プレスリリースの中でこう語っている。

「これは非常に面白い反応でした。人間もそうですが、哺乳類の脳は左目からの視覚情報を右脳で処理します。右脳は、危険な状態などの否定的な情報を専門に処理しています。自分にとって脅威である状態をすばやく認識するために必要な反応なのです。馬は怒った人間の表情から気持ちを読み取り、次に手荒い取り扱いを受けるのではないかと人間の行動を予測し警戒したのです」

   犬も人間の怒った顔を左目で見ることが知られている。別の研究者のカレン・マコーム博士もこう驚いている。

馬の脳は無駄にエネルギーを使わない

「馬は群れで暮らしているので、ほかの馬の感情を読み取る能力を持っていますが、その能力を人間に対しても使っていることがわかりました。興味深いのは、馬の顔と人間の顔は劇的に違うのに、馬は種の壁を乗り越え、人間の怒りなどの否定的な感情を、瞬時に、しかも正確に判断できることです。これはすごいことです」

   確かに私たち人間は、馬の顔写真をいきなり見せられても、「喜んでいる」のか「怒っている」のか、すぐには分からない。馬にはそれができる。ちなみに、人間の「笑っている」写真に特に反応がなかったのは、スミス博士によると「動物にとって、危険を認識することが特に重要で、それ以外のことでは脳は無駄にエネルギーを使わない」からだそうだ。

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