スペイン語圏のスペインやメキシコの映画人が元気だ。スペインの大御所ペドロ・アルモドバル(ボルベール〈帰郷〉)やアレハンドロ・アメナーバル(アザーズ)、メキシコのアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(バベル)やアルフォンソ・キュアロン(大いなる遺産)などはワールドクラスの監督だ。

そのキュアロンが製作にまわり、仲の良いギレルモ・デル・トロが脚本を書き監督したのが、この「パンズ・ラビリンス」だ。本年度アカデミー賞6部門にノミネート、全米批評家協会賞では最優秀作品賞など世界で賞賛された作品である。
メキシコ生まれのデル・トロはアルモドバルに才能を認められ、スペインで「デビルズ・バックボーン」という低予算だが優れたホラー映画を撮ったことがある。1930年代スペインの内戦時、暗い孤児院の中でさ迷う亡霊は怖かった。デル・トロはハリウッドからハリポタ・シリーズのオファーを断り(それをキュアロンが引き受ける)コミック原作の「ヘル・ボーイ」のメガホンを取っている。それほどコミック好き、ファンタジー好きの監督なのだ。
フランコ将軍政権下、1944年のスペイン。おとぎ話が大好きな少女オフェリア(イバナ・バケロ)は、美しい母カルメン(A・ヒル)と山奥の軍の駐屯地へやってきた。父亡き後、母が軍のビダル大尉(セルジ・ロペス)と再婚したのだ。大尉は、農夫の父子をゲリラと決めつけ惨殺するような残忍な男だ
そんな非情な現実を生きるオフェリアに、小間使いのメルセデス(マリベル・ベルドゥ)は優しくしてくれる。彼女は大尉にも信頼されているが、実はゲリラと通じている。ある夜更け、オフェリアのもとに旅の途中に出会った大きな昆虫が現れる。昆虫は妖精に姿を変えて庭の奥にある迷宮(ラビリンス)に誘う。そこには羊の頭と身体を持ったパン(牧神)がいた。パン(ダグ・ジョーンズ)が言うには、オフェリアは魔法の王国の王女だ。三つの試練に耐えられれば故郷の魔法の国へ帰れると約束する。
その試練に取り組むオフェリアが後半を盛り上げる。枯れた巨木に花を咲かせるとか、そのために大蛙の腹から黄金の鍵を取り出すとか、お伽話が延々と続く。暗い画面におどろおどろしい舞台が展開するが、一寸先は分からない闇だ。
ファンタジー映画だが、決して子供向きでは無い。ファシストのフランコ政権が背景にあるだけに、ゲリラとの戦いの現実でも、試練に取り組む迷宮でも、恐怖と哀しみが支配し、多くの血が流れる。
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