さぞや松本清張氏、泉下で嘆いていることだろう。こんなドラマに誰がした、と。松本清張生誕100年スペシャルが泣く。ただただ、つまらないのである。見続けるのが苦痛である。何が理由かと考えれば、清張原作で、脚本は竹山洋という一流なのに、主演と演出がダメだ。誰かが藤木直人のことを美貌と言ったが、目がおかしいのではないか。口元は締まらないし表情はワンパターン。セリフをいうとヘンに口元が歪む癖があり、発声も悪い。それをドあっぷで撮るだけで画面に情感が欠けている。この演出家は劇画の見過ぎか。
田舎育ちで野心満々の美容師・佐山道夫(藤木直人)が、その美貌(!)を武器に、数々の女を手玉にとってのし上がってゆく話だが、既に彼は故郷で殺人を犯し検事・桑山(小林稔侍)に追われる身である。有閑マダムの雅子(室井滋)やその他諸々、筆者は藤木を美男とは全く思わないので、こんな男に女たちが次々と擦り寄る気持ちがわからず、リアリティを感じないのである。
言わずもがなだが、清張作品に価値があるのは、悪の権化を描いても、簡潔な文章ながら、その存在を納得させる周辺の描写があり、行間から人物が立ち上がってこちらに迫る迫力があるからである。この佐山は、刹那的で何も考えないただのバカ美容師に見えてしまう。ドラマの見手は、たとえ悪徳の人物でも、主人公にある種の共感を抱くものであり、それがなければ作品自体の成功はない。
(黄蘭)

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