2024年 4月 25日 (木)

被災漁民たち見守る「六さんのマキリ」震災1年目の夜にほっとしたドキュメント

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ドキュメント20min.(NHK3月12日深夜0時55分)>若いディレクターが作る20分間のドキュメンタリー番組だ。この日は「六さんのマキリは俺たちの絆」というタイトルで、東日本大震災の被災地で漁具も作る漁師が登場した。

   「徹底検証!あのとき原発は」みたいなドキュメンタリが悪いとは言わないけれど、悪者さがしだけではあまりにも希望がないんじゃないか。朝から晩まで震災特番に追われた3月11日だったからこそ、1日の終わりにこの番組を見てほっとした。

海の上のサバイバルナイフでつながる男たち

   岩手県山田町船越地区に漁師であり職人でもある男がいる。漁師歴50年。佐々木源六さんで、通称「六さん」が作るのは「マキリ」だ。魚のうろこを引いたり、邪魔なロープを切ったりと、海上でのサバイバルナイフに当たる道具で、腰にぶら下げ、柄にはエビやタイの彫刻を施す。漁師の傍らで始めたマキリ作りはもう20年になる。

   六さんの船は津波で壊れた。家は流れた。いまだに漁船の修理は終わらない。でも、高台の避難所に移った直後からマキリ作りをすぐに再開した。船越の漁師は六さんのマキリでつながっているからだ。六さんにマキリ作りを依頼した漁師・橋端さん(36)は津波で父を失った。だが、沖に避難させた船は無事だった。六さんは彼のためのマキリの柄を丁寧に彫り込んでいく。白木の地に黒々と艶のある字が浮かび上がる。よくある「大漁」ではない。形見の船「魂丸」の2文字だ。あえて金や銀のラッカーは使わず、六さん得意の魚の彫り物も施さなかった。引き締まった外観に橋端さんの顔がほころぶ。「あとは漁に行くだけだね」

   何も装飾のないマキリを大事そうに握りしめる若者もいた。震災の直前に漁師になることを決意した荒川くん(19)だ。すりこぎよろしく質素なマキリは六さんからのエールだ。「早く一人前になれよ」。父を津波で失い、六さんのマキリもがれき撤去に使うしかなかった荒川くんは、昨年(2011年)半ば、漁協の船でやっと初めての海に出た。きらびやかな装飾は「一人前になったら彫ってほしいです」

   脱サラ漁師にその師匠格のベテラン漁師。他にもたくさんの『六さんチルドレン』が登場した。いい笑顔にうっかり涙がにじんだ。「マキリはやっぱり海で使うもんだ」。嬉しそうにそう言いながら、漁港に並ぶ船越の男たちを見ると、ほおが緩む。そうだそうだ、草木やがれきの撤去にもマキリは役に立つけれど、やっぱりそれじゃあ違う。

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