2024年 4月 20日 (土)

海洋発電でも立ち後れ日本―英国は2020年までに全電力の15%原発2基分

   スコットランドのオークニー諸島に、「ヨーロッパ海洋エネルギーセンター」がある。イギリスが国家戦略として作った海洋発電実用化の実験場だ。動いている発電装置は10を超える。ここに日本企業として初めて川崎重工が乗込む。来年から直径18メートルのプロペラを持つ潮流発電装置の実験を始める予定だ。なぜイギリスでやるのか。「世界でいちばん環境が整っているから」だ。ここでは、沖にある発電装置から海底ケーブルで発電量、気象データ、波の高さ、潮の強さなどすべてがリアルタイムで記録される。実験装置を持ち込めばただちに始められるのだ。

   川重の予定地の近くでは、他の企業が6年続けている直径6メートルのタービン型潮流発電装置が動いていた。長さ140メートル の「ペラミス(海蛇)」という波力発電装置もあった。うねりの力を油圧ピストンに伝え、その力で発電タービンを回す。1基で1000世帯分を発電することができる。

15年前にプロジェクト中断したまま

   イギリスの海洋発電は、14年前に3人の技術者が作った模型がスタートだった。政府の開発支援を受けいまは数十億円の巨大プロジェクトだ。大型化でコストが下がり、数年後には風力発電に迫るという。当局者は「短期的には風力だが、長期では海洋だ。信頼性が高く安定した電源になる」という。別の潮流実験施設では、1500世帯分を実際に町へ送電していた。天候の影響をほとんど受けないから稼働率は風力の2倍という。

   英政府は、2020年までに原発2基分を賄い、自然エネルギーを全電力の15%にしようという目標を設定している。電力会社も「2030年には40万~50万キロワットの商業化をやっているだろう」という。

   海洋発電はイギリスの他にも、アメリカ、中国、韓国、オーストラリア、ブラジルも取り組んでいる。ところが、海岸線の長さでは世界6位という日本は大きく立ち後れている。海洋エネルギーの潜在量は「原発10基分」といわれながらだ。東大生産技術研究所の木下健教授は「15年前まで国のプロジェクトがあったが、原子力と太陽に集中させて、海洋はやめてしまった。大きな失敗だった」という。

   いまはいくつかのベンチャー企業が細々と実験を行っているだけ。 和歌山・すさみ町で10年になる古澤達雄さんは、「4年、5年でできるかと思ったが、倍かかってもまだ先が見えない」という。全国30か所以上を回ったが、実験にこぎつけたのは2か所。海は権利関係が複雑で、自治体、漁協、国の省庁と、ひとつ欠けても動かない。

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