2024年 4月 20日 (土)

本人も気づかない「トラウマ」幼少期の辛い記憶よみがえり抑鬱状態や不安障害

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   原因がわからず、薬ではなかなか症状が改善されず自殺に追い込まれるケースも少なくないうつ病や摂食障害、依存症、頭痛は、幼少期などに体験した虐待やいじめ、性障害などの心のキズ「トラウマ」が深く関わっていることがわかってきた。トラウマはこれまで戦争や大きな事件・災害に遭遇した時に心にできるキズとされてきたが、それに限らず、これまで考えられてきた以上に幅広く、ごく身近な日常生活のなかでトラウマを負い、心の病は発生するという。

   アメリカの精神医学会は今年5月(2013年)、抑鬱状態や不安障害にトラウマが関わっているとの見解を示し、診断マニュアルを19年ぶりに改訂している。日本でもトラウマを和らげる治療が臨床心理士によって始まっており、長い間、原因がわからない頭痛に悩まされてきた患者が苦しみから解放されるケースも増えている。

父親への恐怖!飼いネコ守れなかった自分責め続け止まぬ頭痛や引きこもり

   慢性的な頭痛に苦しんでいたこの女性は、これまで病院を転々としてさまざまな痛み止めの処方を試みたが、いっこうに症状は改善しなかった。10年前に精神科の医師からうつ病と診断され、向うつ薬を使った治療を5年間続けたが、それでも治らず、さらに悪化して仕事に行くことすらできなくなった。

「死のうとしか考えてなかった時期ですよ」

   医師のすすめであるクリニックを受診した。担当の臨床心理士が女性の育った環境について聞き取り調査を行なったところ、子どもの頃に実父から過酷な虐待を受けていたことが分かった。

「なんか知らんけど、(父親に)包丁を突きつけられ、すごく怒られ叩かれた。日常茶飯事だった」

   恐怖で抵抗できなかった体験が深いトラウマになっていた。トラウマを抱えている人は、その過酷な体験を思い出したときに、感情をつかさどる右脳が興奮状態になり、記憶を処理する左脳の活動が低下して脳の活動がアンバランスになって心と体に異常をきたす。

   トラウマによって起きる問題への処理方法として、最も広く行われているのが「認知行動療法」だ。カウセリングを通じて脳の活動にバランスを取り戻し、トラウマが体の不調などの問題に繋がらないように導く。女性は「認知行動療法」に加え、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)の治療を受けた。EMDRはトラウマになっている辛い記憶を心に思い浮かべながら、臨床心理士の指の動きや機械の光の動きを追い、目を左右交互に動かす。左右の脳に刺激を与え、右脳の興奮状態や左脳の機能低下を和らげることによってバランスのとれた状態を取り戻し、トラウマから解放できると考えられている。WHO(世界保健機構)もEMDRを患者の負担が最も少ない治療法として推奨している。

   治療を始めた女性は、父親による暴力の記憶を一つひとつたどっては取り除く作業を繰り返した。そして3か月、もっとも深刻なトラウマを生み出した原因に突き当たる。

「ネコは恨んでないかな~、助けてって」

   17歳の時のことだ。可愛がっていたネコを父親が捨てると言い出した。父親への恐怖から止めることができず、心の奥底でネコを守れなかった自分をいまも責め続けていたのだった。

「過去が全然過去じゃないんです。むしろいまと過去がグジャグジャになって自分の身に振りかかっている感じなんです」

   臨床心理士は「ネコを守れなかった自分の否定的な思いがうつ病や頭痛に繋がっている」と分析し、自分自身を責める女性の思考パターンを取り除く作業をはじめた。女性が自分は悪くないと思った瞬間に、長年苦しんできたトラウマから解放され頭痛やうつ症状も治まったという。

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