2024年 4月 24日 (水)

買わなくてよかった!「ふくらはぎ本」そんなとこもんでも長生きしないよ―医者は一刀両断

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<「ふくらはぎをもめば、少しは血流が良くなると思います。しかし、そういうことなら足裏をもんでもいいし、太もものほうがさらに効果があるでしょう。筋肉部分が大きいですから。
   もっと言うのならウォーキングをしたほうが効果はある。大股で腕を振って歩いたほうが、よほど健康になります」(愛知みずほ大学特任教授の佐藤祐造氏)>

   『長生きしたけりゃふくらはぎをもみなさい』(アスコム)が95万部も売れているという。実をいうと私も買ってみようかなと思い始めていたのである。これほど売れているのだから「何か」あるのだろうとAmazon.co.jpで中古本を取り寄せてみようと考えていた矢先、『週刊文春』が「この本はインチキ本だ!」「詐欺商法だ」と決めつける記事が出たのである。

   この本、ふくらはぎをもむだけで「高血圧から糖尿病、がんにまで効果があるというのだ。この本が売れるきっかけになったのは「中居正広の金曜日のスマたち」で3度にわたり特集されたことからだという。3回目には高血圧に悩む芸能人やお笑い芸人が、著者の指導を受けて「食事制限なし」で1か月続け、正常値になったと手放しでほめたから、売れ行きに拍車が掛かった。

   だが、医者たちは医学的に何ら根拠がないインチキ本だと一刀両断なのだ。ふくらはぎが知らせる不調のシグナルとして、<熱くてかたい→高血圧><冷たくてやわらかい→糖尿病>と分類しているが、おない内科クリニックの小内亨院長は「こじつけだ」とにべもない。

<「冷たくてやわらかいのは、結果であって原因ではありません。それはここに書かれているすべての病気に言えますね。結果を治しても原因は治りません」>

   肺がんで背中が痛いのにマッサージを受けるようなものだろう。

   この本を書いたのは2人。監修者として鬼木豊氏、著者として槙考子氏。お茶の水にある治療院「心身健康堂」の理事長と院長である。

   さらに同じ内容の本が4年前にもアスコムから出ているというのだ。タイトルは『たちまちからだが温まる ふくらはぎ健康法』。週刊文春によれば、本文2か所の文言が変わっているだけで、他はそっくり同じなのに奥付には「大幅な加筆訂正により、改題したもの」と書かれている。出版倫理など持ち出さなくとも、こりゃあ少しおかしくないか。そう思った週刊文春が版元のアスコムに取材を申し込んだが、「担当者が終日外出している」と逃げ続けているそうだ。

   それなら本人に直撃しかあるまい。鬼木氏を静岡の伊東市で見つけて「疑問」をぶつける。鬼木さんは医者ではないですねという質問に、「そう、だからワタクシは病気を研究しているんじゃなくて、生き方や人生を研究しているんだよ」

   生き方や人生を研究するとがんや糖尿病が治るのかという至極真っ当な疑問には、「(激昂して)それは違うよ! それはさ、冷え性を良くすると全部、万病に良くなるんだよ」

   冷えを改善すればすべて良くなるのか?

「そいうこと。それが東洋の、西洋のルーツです。そこは勉強しなさい!」

   こうした本をありがたがって90万人以上が買って読んだというのが信じられない。ベストセラーに良書なし。次から次へと出てくるダイエット本や簡単に健康になる本が常にベストセラー上位に顔を出すのは、苦労しないでやせたい、痛い思いをしないで健康でありたいと願うヤワな日本人が増えたためであろう。

   集団的自衛権を容認すれば日本の安全が保てると妄信している安倍首相にどこか似ている気がする。<長生きしたけりゃ、こんなインチキな本にダマされてはいけない>。週刊文春のいうとおりなのであろう。買わなくてよかった。

アベノミクスでいよいよ拡大「暮らし格差」バブルに踊る富裕層、庶民は相変わらずデフレ生活

   『週刊新潮』が今が好景気だという風潮に疑問を投げかけている。街を歩いてみると、夜タクシーを捕まえようと思ってもなかなか捕まらないし、老舗ギャラリーでは1点数千万円もする絵をポンと買う客がいる。銀座の高級寿司屋「久兵衛」には1日に300人以上が詰めかけるし、銀座はどんどん新しいクラブがオープンしているそうだ。

   都内の高級ホテルは稼働率が9割もあり、千代田区の超高級マンションの4億4980万円の部屋があっという間に売れたそうだ。

   6月18日にカナダの金融機関などが発表した「ワールド・ウエルス・レポート2014」によると、金融資産100万ドル以上持つ日本人は前年より43万人も増えて233万人に達した。私のような由緒正しい貧乏人は「ほんとかいな?」と思ってしまうのだが、週刊新潮はこの謎をこう解き明かしてくれている。

<たとえば、総務省が6月27日に発表した5月の「家計調査」によると、一世帯あたりの消費支出は27万1411円。前年同月比と比べると8%も減っているのだ。
   上場企業の給料が増え、インフレ政策を断行したはずなのに、日本全体では使える金がなぜか細っている>

   経済アナリストの森永卓郎氏が種明かしをしている。<「確かに昨年は倒産が減りましたが、一人一人の給料は増えてはいないということです。アベノミクスの恩恵を受けたのは、円安で儲かった大企業と持ち株が上がった富裕層だけ。両方ともカネが余っているから高級品が売れる。都心の不動産も2億円、3億円といったものは即完売ですが、3000万~5000万円といったサラリーマン向けの物件は売れ残ったままです。社会は二極化が進み、庶民は相変わらずデフレ生活です」>

   厚生労働省は先頃、5月の有効求人倍率が1.09倍になったと発表したが、私が見ても「おかしい」と思わざるをえなかった。内訳は土木作業員の求人倍率が5倍超なのに、事務系正社員は0.6倍前後なのだ。ゼネコンにジャブジャブカネをつぎ込んでいるから、そっちのほうの求人が多いのは当たり前だ。貧乏人はますます貧乏に、富める者はますます富んでいくアベノミクスなど止めてしまえ。そう叫びたくもなる。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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