バイオ産業
歴史
先行欧米に遅れたが応用分野で追い上げ
日本でバイオブームが起きたのは1980年のことである。
バイオの基礎研究で先行した欧米に比べて、日本のバイオ研究の歴史は浅く、特に基礎技術分野などでは大きく立ち遅れていた。しかし日本が得意とする具体的な商品への実用化など応用分野では猛烈な勢いでキャッチ・アップが進んでいる。
日本のバイオテクノロジー関連の市場規模は、1980年の約2000億円から、2001年には約1兆4330億円へと高成長を続けている。1999年に当時の通商産業省(現在の経済産業省)がまとめたバイオテクノロジー産業創造のための振興策では、2010年で25兆円と見込んでいる。
ヒトゲノムを新薬開発につなげる努力が始まる
医薬品製造分野では、遺伝子研究の最先端でヒトゲノム(人の全遺伝情報)の解読が2000年に完了したが、その成果をふまえて、遺伝子機能を新薬開発につなげようとする努力が開始された。農業や化学工業の分野でも基礎研究が進んでいる。近い将来には食糧増産、化学合成プロセスの省エネルギー化が実現する見込みが出てきた。
ナノテクノロジーとの融合分野であるナノバイオや、微生物や植物を利用した環境汚染物質除去技術(バイオレメディエーション)、たんばく質解析手法コンビナトリアル・バイオエンジニアリング、植物に有用な物資を生産させる分子農業なども、有望な技術として注目されている。
2002年7月には、日本政府のバイオテクノロジー戦略会議が発足した。国際競争力強化を目指した戦略大綱を策定し、政府の研究開発予算を5年間で2倍以上のペースで増額、先端医療品、情報技術との融合分野、計測機器分析機器など研究開発の優先分野を重点的に推進する行動計画を打ち出している。