2050年に新車のCO2排出量を70%削減する
そんな収益第一の日産がコストとリスクをかけて環境技術の強化に本腰を入れるのはなぜか。環境性能、とりわけCO2排出削減につながる燃費性能が自動車会社の避けて通れない優先度第一の課題になると判断したことが大きい。志賀COOは「Q(品質)C(コスト)T(時間)にCO2を日産のマネジメントウェイに加える」と話す。QCTまたはQCD(デリバリー=納期)はメーカーが重視する3要素。これにCO2を合わせ「QCT・C」にするというわけだ。
「ニッサン・グリーン・プログラム2010」は究極のゴールを「日産の企業活動と日産車の使用過程から生じる環境負荷を自然が吸収可能なレベルに抑える」とし、2050年に新車のCO2排出量を70%削減する必要があると想定。内燃機関(ガソリン・ディーゼル)の燃費向上とHV、EV、FCVなど電動車両の普及が具体策となる。
CO2排出削減に日産のパートナーであるルノーの技術がどれだけ寄与するか。電動車両技術を持たず、ディーゼルの評価も高いとはいえない。「すべての技術が成功を収めるわけではない。しかしニーズがどこに発生するか分からない。だからこそすべての技術開発に着手しなければならない」(カルロス・ゴーン社長)。厳しい環境技術競争において、ますます日産の奮起が求められることになるだろう。
とくに、研究開発から量産に移行する際にはケタ違いの投資が必要になる。ここで新技術が見捨てられる現象は「死の谷」と呼ばれる。経営陣が死の谷を越える決断をするかが次世代商品の革新性に大きく影響してくる。