「安倍首相の外交手腕を小泉前首相と比較してコメントするのはまだ早すぎる。まだ政権ができてから7ヶ月しかたっていないのだから」――。
米国の第一次ブッシュ政権で国務副長官を務め、日米関係の中心的な柱として活躍してきたアーミテージ氏は2007年4月26日、東京・内幸町の日本プレスセンターで講演した後の歓迎レセプションで私の問いかけにこう答えた。安倍首相は26日初の訪米に出発し、27日ブッシュ大統領と会談したが、アーミテージ氏にとっては、政権を超えた長期的な日米の友好関係つくりの方がより重要ということのようだ。
もっとも、米国のイラク戦略を批判した久間防衛大臣の発言なども念頭においてか「来日した副大統領はミスターキュウマと会わなかったね」と指摘し、しばらくは安倍政権の出方を注視したいという慎重な側面ものぞかせた。
東アジアの政治・外交・安全保障に詳しいアーミテージ氏は2000年秋にいわゆるアーミテージ・リポート「米国と日本―成熟したパートナーシツプに向けて」を発表、日米同盟強化を実践した。また07年2月には2020年までの対アジア戦略と政策提言をまとめたアーミテージ・リポートの第二弾「日米同盟2020年までのアジアの望ましいあり方への展望」を発表した。
日本にとってもっとも信頼できる米国の友人として知られるアーミテージ氏だけに、NPO法人US-Japan LINK(理事長・田村玲子氏)が主催した講演会では久間防衛大臣のほか安倍首相の名代として菅総務大臣も顔を出すなど盛況だった。
もっと当の久間氏は「日米同盟は重要だという私の真意はアーミテージ氏もよくわかっている。防衛省に昇格してから外国からのお客さんも増えているし、防衛省の存在は強まっている」と動じない姿勢を強調していた。
【長谷川洋三プロフィール】
経済ジャーナリスト。
BSジャパン解説委員。
1943年東京生まれ。元日本経済新聞社編集委員、帝京大学教授、学習院大学非常勤講師。テレビ東京「ミームの冒険」、BSジャパンテレビ「直撃!トップの決断」、ラジオ日経「夢企業探訪」「ウォッチ・ザ・カンパニー」のメインキャスターを務める。企業経営者に多くの知己があり、企業分析と人物評には特に定評がある。著書に「クリーンカー・ウォーズ」(中央公論新社)「ウェルチの哲学「日本復活」」、「カルロス・ゴーンが語る「5つの革命」」(いずれも講談社+α文庫)、「レクサス トヨタの挑戦」(日本経済新聞社)、「ゴーンさんの下で働きたいですか 」(日経ビジネス人文庫)など多数。