2024年 4月 19日 (金)

朝日1面トップ恥ずかしい大訂正 「生活保護世帯に失礼だ」

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   朝刊の1面トップと言えば、新聞の顔となる記事だ。そこで、朝日新聞が、なんと数字を1けた間違い、同じ1面に訂正を出した。調査した生活保護世帯の3%が給食費未納というべきところを、10倍も多い3割としていたのだ。その数字を前提に、記事では、「払えぬ理由 把握が先決」だとして、生活保護費からの給食費天引きに対して慎重な意見を紹介している。

「給食費未納3割」が3%の誤り

朝刊の1面トップ記事の訂正を出した朝日新聞社
朝刊の1面トップ記事の訂正を出した朝日新聞社

   訂正を出した記事は、2007年10月28日付の朝日新聞朝刊に掲載された。「生活保護世帯の家賃・給食費 厚労省、自治体に 滞納防止 天引き促す」との大見出しが付き、1面記事欄の3分の1ほどを費やしている。

   そこでは、会計検査院の調べとして、サンプルとなった生活保護費受給世帯の一部が、支給された学校給食費、公営住宅家賃などを学校や行政部局に納付していないことが報じられた。検査院は、05、06年度の2年分について、全国の約1割の福祉事務所126か所で抽出調査し、教育扶助の一部として学校給食費を受給している「5600人」を調べた。そして、その「32.1%」に当たる1800人が総額4200万円を納めていなかったとした。

   ところが、朝日は、10月30日になって、1面の片隅に訂正を掲載。学校給食費の受給者数は「5万6千人」の誤りで、「1けた間違っていた」とした。そして、未納者の割合も「3.2%」の誤りだったとして、中見出しの「給食費 未納3割」も訂正した。

   なぜ数字を1けたも間違ったのか。J-CASTニュースでは、朝日新聞広報部に取材を申し込んだところ、10月31日になって回答が寄せられた。理由については明示されていないが、次のようなものだ。

「ご質問いただいた件につきましては、30日付朝刊1面の訂正文でご説明した通りです。28日付朝刊1面の記事は、生活保護費として支給された学校給食費、公営住宅家賃、介護保険料の一部が納付されていない事実を会計検査院が指摘し、指摘を受けた厚生労働省が各自治体に代理納付制度の活用などを求める通知を出したこと、代理納付制度の導入には慎重な意見があることを報じたものです。その事実関係に誤りはありません。今後は数字の間違いがないよう、より一層注意してまいります」。

   今度は、会計検査院に聞くと、渉外広報室では、「今回の報道は、朝日の独自取材に基づくものと思われます。検査院では現在、決算検査報告をまとめているところで、公表したものではありません。従って、問い合わせには一切お答えできません」とのことだった。

「すごく多いんじゃないかと記者さんに言ったんです」

   朝日の記事では、検査院から指摘を受けた厚生労働省が、都道府県などに対し、福祉事務所による給食費の代理納付、つまり、生活保護費からの給食費の天引きの活用を求めたと言及。天引きは、100万を超える生活保護世帯への影響が大きいとして、福祉事務所でのケースワーカー経験がある法政大現代福祉学部の杉村宏教授による「払えないのはなぜかを福祉事務所が把握するのが先決で、安易に代理納付をするべきではない」とのコメントを紹介していた。

   ところで、数字が大きく違っていたとすると、この論旨は崩れないだろうか。記事は、これほど未納が多いのには理由があるから、天引きには慎重であるべきとの論旨に読み取れる。しかし、理由を求めるほど多くないとすると、天引きは逆に肯定的に捉えられるべきなのかどうかである。

   朝日からは回答が得られなかったため、このことを杉村教授に聞いてみた。すると、杉村教授は、J-CASTニュースに対し、「(天引きは)学校などに、生活保護を受けているという個人のプライバシーを知られてしまうことになります。安易にするべきではないという点は、変わりません。給食費の未納が3%ほどなら、仕方がないと思います」と答えた。

   もっとも、数字の訂正には、杉村教授もあきれた様子だった。

「ちょっとおかしいと思ったんですよ。『正直言って30%はすごく多いんじゃないんですか』と記者さんに言ったんですけどね。抽出調査なので、私には元の数字が分かりませんから。ああ、発表じゃなくて独自取材なんですか」

   さらに、杉村教授は、「ケースワーカーは滞納しないように指導・援助する仕事」として、かつての自らの仕事が否定されたかのような記事に困惑していた。また、結果として、生活保護世帯の滞納が大きくクローズアップされたことに、「生活保護の家庭には、失礼になると思いますよ。ちょっとずさんでしたね」と苦言を呈した。

   なお、厚労省保護課にJ-CASTニュースが問い合わせたところ、会計検査院から指摘があったことを認めた。指摘については「受け止めなければならない」としており、都道府県に10月5日付で、適切な納付を指導すること、場合によっては天引きの活用を検討することを通知したとした。また、未納の理由を把握していなかったので、今後、給食費支給の実施状況を調べることも明らかにした。朝日の記事については、「コメントは特にありません」としている。

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