2024年 5月 4日 (土)

枝川二郎のマネーの虎
サブプライム問題のウソ・ホント(1) 米国の住宅事情、現実は想像よりもずっとよい

家の鍵を銀行に送る「ジングルメール」が増えている

   さらに、アメリカではノンリコース・ローン(物件を返せば完済とみなされるローン)が一般的なので、住宅ローンの返済ができなくなった場合には「家をあきらめる」という選択肢がある。で、最近増えているのが「ジングルメール」だ。これは、家の鍵を銀行に郵送することを意味する。家(の鍵)といっしょに住宅ローン債務とも「さよなら」してしまう、というのだ。

   サブプライム・ローンでは、貸しやすくするために当初の返済は金利のみ、といったものが流行したが、ジングルメールでとくに大きなメリットを受けるのがこのタイプだ。元本返済が始まる前にジングルメールを送って引き払ってしまえば、住んでいた期間は割安の家賃を払っていたのと同じことになる。ほとんど詐欺みたいな話だが、法律上の問題はない。(ジングルメールを出した人は、その後のクレジット審査が厳しくなるが、破産や差し押さえなどとは異なり、2、3年待てばきれいに戻る。そのほか、細かく言うといろいろな例外があるが、ここでは原則論を述べた)。

   現在「ジングルメール」方式が主流になっているわけではない。さすがに一般人にとっては心理的抵抗が大きいやり方だからだ。しかし、差し押さえなどの法的処理に比べて早く物件を処分できるため、借り手のみならず金融機関さらには経済全体にとってもメリットがあるという見方も出てきた。今後注目すべき動きである。


++ 枝川二郎プロフィール
枝川二郎(えだがわ じろう)国際金融アナリスト
大手外資系証券でアナリストとして勤務。米国ニューヨークで国際金融の最前線で活躍。金融・経済のみならず政治、外交、文化などにもアンテナを張り巡らせて、世界の動きをウォッチ。その鋭い分析力と情報収集力には定評がある。


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