2024年 4月 19日 (金)

ワークスタイルの変革で「環境負荷」が減る
グリーンITの現在と未来 東大・江崎浩教授、日立・竹村哲夫氏対談

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   洞爺湖サミットが近づき、一段と「環境」問題に注目が集まっているが、IT業界でも「グリーンIT」というキーワードが盛んに飛び交っている。一般的には、IT機器やデータセンターの省電力化という分野での取り組みとされているが、ASPやSaaSといった、Webの世界で耳にする技術もグリーンITに貢献している。さらには、その目線は都市デザインにまで及ぶ「地球規模」の壮大なビジョンであることを知る人は、まだまだ少ない。

   そこで、東大で「グリーン東大工学部プロジェクト」を推進する江崎浩同大教授と、グリーンITを積極的に推進する日本ベンダーの1つである日立製作所の竹村哲夫同社理事のお二人から、「産」「学」それぞれの立場から「グリーンIT」の現状と課題、未来への展望について聞いた。

「環境経営」が大学では進んでいない

日立・竹村哲夫氏
日立・竹村哲夫氏

――ひとくちにグリーンITと言いますが、どこまでやれば「グリーン」なのでしょうか?

竹村   ICT(情報・通信)産業がグリーンITに対して担う役割には、3つの分野があります。

   まず1つ目は、省エネ効果の高い機器を提供すること。これはベンダー本来の業務ですから、非常に分かりやすい取り組みです。

   2つ目が、エコシステム全体の省エネに寄与する技術を、ICTで実現すること。たとえば、オフィス以外の場所で働くテレワークのようなワークスタイルの変革や、RFIDによる物流の改革、さらにはITS(Intelligent Transport System)による渋滞緩和といった分野までが含まれます。テクノロジーによって、利便性の向上を目指しつつ、CO2の排出量削減の面で効果を得るということですね。

   3つ目は、地球環境そのものをモニタリングする仕組み作りです。電力消費やCO2排出の状況を地球規模でモニタリングし、危機管理や効果測定に役立てる技術を提供していく分野になります。

   日立ではそれぞれの分野で取り組んでいますが、当然1つのベンダーだけでなしえる話ではありません。たとえば物流などは多様な業界が絡む部分ですので、協力しながら進めていく必要があります。もちろん「産」だけでなく、「学」「官」とも協調して進めていくべきでしょう。
江崎   我々はその「学」になるわけですが、3つ目の「モニタリング」の分野では、気象センサを持ち寄って地球環境をモニタリングしようというプロジェクトを3年ほど実施しています。まずはモニタリングした情報をオンラインに載せるところからはじめ、最終的にはこの情報を基にしたワークスタイルの変革という展開を目指すものです。

   その1つの手法が、企業、団体の施設や環境を総合的に企画・管理・活用するファシリティネットワークマネジメントです。実際にチャレンジしてみると、私たち「学」の分野がまったく進んでいないことに気づきました。同時に「官」も非常に遅れている。

   企業は経営者がポートフォリオで判断しているため、エネルギーについてもきちんとチェックする体制が整っています。しかし「学」や「官」では、そういった部分を見る人がいないという問題があるんですね。

   この問題に対し、採算を度外視してとにかくはじめてしまえ、という考え方は非常に危険です。ROI(投資収益率)を提示した上で、投資に対するリターンを判断するための仕組みの部分から作らないといけません。そこは「産学官」が一体となって推進していく必要があると思います。
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