2024年 5月 4日 (土)

枝川二郎の「マネーの虎」
投資マネーの流入はウソ? 原油価格高騰の真犯人

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原油高騰、なにもしないリスクは高い

   では、先物ではなく原油の現物を買い占めてもうけようとしているのか? もし原油相場をつり上げようとする流れがあるのならば、石油の在庫が大きく増えているはずだ。しかし、そういう統計はない。逆に多くの産油国ではフル稼働して産出しているというのが実情だ。

   そうなると、原油高騰の原因はなにか? やはり需給だと考えるべきだろう。中国では1990年から2006年のあいだに石油の消費量が年7.7%(つまり10年で2倍以上)増えた。現在中国では33人に1台の割合での自家用車を保有している(カリフォルニア大学ハミルトン教授の調査による)。それが10人に1台、5人に1台になっていったらどうなるか。その不安が原油価格の高騰を誘ったとしても不思議はない。

   ともあれ、われわれは原油価格の高騰を嘆き悲しんでいても仕方がない。当コラムでは07年11月に、商品相場の高騰をいかに自分に有利にもっていくべきかについて述べたが、それを実践している会社ももちろんある。

   たとえば、米国のサウスウエスト航空(乗客数で世界最大の航空会社)は原油価格高騰をものともせず増益をずっと続けている。これは同社が燃料費の安定を図るために原油価格のヘッジを以前から積極的に行ってきたからだ。同社では2008年に使用する燃料の70%が1バレル当たり51ドルで手当てされている。これはなんと、原油価格の指標であるWTIのいまの価格の半額以下だ。

   一方で、世界では原油価格の高騰で莫大な赤字を計上している航空会社も多い。これはリスク管理の巧拙が企業の存亡を左右する良い例だと思う。原油価格の動きにただ身を任せているという行為が、最もリスクが高い行為なのだ。


++ 枝川二郎プロフィール
枝川二郎(えだがわ じろう)国際金融アナリスト
大手外資系証券でアナリストとして勤務。米国ニューヨークで国際金融の最前線で活躍。金融・経済のみならず政治、外交、文化などにもアンテナを張り巡らせて、世界の動きをウォッチ。その鋭い分析力と情報収集力には定評がある。


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