2024年 4月 20日 (土)

117億投じる「国営マンガ喫茶」 なぜ「お台場」に建設なのか

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   15兆円規模にものぼる補正予算の審議がヤマ場を迎えるなか、その内訳について、野党から批判の声があがっている。特に問題視されたのが、117億円の予算が付けられている「国立メディア芸術総合センター(仮称)」なる施設。お台場が有力な建設予定地とされているのだが、「アキバ文化」に詳しいジャーナリストからは、「秋葉原や『アニメのまち』杉並区などを無視する形のうえ、いきなり『ハコモノ』を作っても上手くいかないのでは」と、疑問の声があがっている。

1つの場所で、あらゆるメディアに触れられる施設?

「国立メディア芸術総合センター(仮称)」のイメージ図(文化庁報告書より)
「国立メディア芸術総合センター(仮称)」のイメージ図(文化庁報告書より)

   鳩山氏は2009年4月28日の衆院本会議で代表質問に立ち、補正予算について

「官僚に頼り切りの麻生総理は、現在の予算に潜む税金の無駄遣いには手を付ける意志もありません。補正の規模は10兆円とうかがっていましたが、翌日には15兆」

などと「どんぶり勘定」ぶりを批判、その一例として、

「例えば、アニメの殿堂。総理のアニメ好きは存じておりますが、何故117億円も投じて『巨大国営マンガ喫茶』をつくり、独立行政法人を焼け太りさせる必要があるんでしょうか」

などと批判した。

   鳩山氏がやり玉に挙げたのは、「メディア芸術総合センター(仮称)」と呼ばれる施設で、補正予算の中にも盛り込まれている。文科省関連で1兆3174億円あるうち、「文化芸術の振興-映画・アニメ等の『日本ブランド』の確立」という項目に315億円を計上。そのうち117億円が、今回の施設の建設に投じられるという。

   文化庁の芸術文化課では、

「補正予算に含まれている『センター』の構想は、有識者による審議会『メディア芸術の国際的な拠点の整備に関する検討会』の報告書をベースにしたもの」

と説明。この「検討会」は、浜野保樹・東京大学大学院教授を筆頭に、「アニメ」「マンガ」「メディアアート」といった各分野から集められた11人で構成され、08年4月から6回にわたって会合が開かれた。その会議の成果として、09年4月28日に発表された報告書に、「センター」の概要が説明されていた。

   まず、報告書では、

「我が国においては、メディア芸術作品について、分野横断的に常時展示している施設がないため、我が国の映画、マンガ、アニメ、ゲーム等のメディア芸術作品を、いつでも、かつ、一つの場所で鑑賞することはできない状況である」

と、現状の問題点を指摘。センターが目指すべき機能として、「メディア芸術作品の展示」「収集・保管」などを挙げている。さらに、

「映画、マンガ、アニメ、ゲーム等、メディアアート等をすべて一元的に取り扱うことが望ましい」

ともあり、「1つの場所で、あらゆるメディアに触れられる施設」のようなものを目指すようだ。さらに、「センター」の設置で、

「文化の振興に寄与するのみならず、観光の振興及び産業の振興にも寄与する」

とも力説している。

「アニメ振興ならば、『アニメのまち』杉並で行うのが自然」

   一方、具体的な建設時期や規模は曖昧なままで、時期は「可能な限り早急に取り組むことが必要」。建設規模は、延べ床面積約1万平方メートル、土地面積2500平方メートルで、建物は4~5階建てを想定していると言うが、肝心な建設場所については「東京都内とすることが適当」「東京臨海副都心(お台場)は、好適地の一つ」とするにとどまっている。

   設備面についても、

「質の高い展示を行うための設備、アニメ等を上映するためのスクリーン、情報提供を行うためのコンピュータ機器等について十分な整備がなされるべきである」

といった記述があるぐらいだ。

   また、運営は外部に委託するといい、入場者数は文化庁が主催している祭典「メディア芸術祭」の08年の1日あたり入場者数が約5000人だったことから

「(「センター」の)1日あたりの来場者数としては、最低限、この半数程度を達成すべき」

として、「1日250人×年間開館日数250日」で、年に「約60万人」を見込んでいる。

   麻生首相は前出の衆院本会議で、

「今日、日本文化発信の中心的存在であります、アニメ、マンガ、ゲームなどの『ジャパン・クール』と呼ばれるメディア芸術の国際的な拠点を形成することが重要であると考えております。新たに創設いたします国立メディア芸術総合センターは、独立行政法人国立美術館の一組織として設けるものですが、管理・運営はすべて外部委託にするとともに、必要な財源は自己収入でまかなうということに致しております」

と答弁したものの、やはり詳細は不明だ。

   「アキバ文化」にも詳しいITジャーナリストの井上トシユキさんは、

「麻生さん自身が『オタクの聖地』と呼んでいる秋葉原や、腐女子が多く出現する『乙女ロード』がある池袋などとの連動性がないまま、突然お台場に『建物』が作られるということに、唐突な感じを強く受けています。アニメ振興ならば、『アニメのまち』杉並で行うのが自然でしょう」

と、「お台場」という場所に対する違和感を強調している。さらに、アクセスの悪さが致命傷になる可能性すら指摘している。

「仮に『ハコモノ』を作るにしても、例えば、秋葉原で閉鎖されることが決まっている『石丸電気SOFT1』を借り上げるなど、他にマシな場所や、やり方はあるはずです。閉鎖が決まった厚生労働省の『私のしごと館』(京都府相楽郡精華町)は、アクセスが非常に悪いことが問題点のひとつだったのですが、お台場も決してアクセスは良くはありません。今回の『センター』が『しごと館』の二の舞にならないか心配しています」

   鳩山氏も、やはり麻生首相の答弁に納得していないようで、5月9日に青森県南部町で行われた講演でも

「簡単に言えば国立のマンガ喫茶。大変な浪費で、ばかばかしい」

と批判した。

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