2024年 5月 5日 (日)

高橋洋一の民主党ウォッチ
民主の郵政民営化見直し 政策能力が酷いこと示すいい実例

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まじめに計算すれば税金投入は避けられない

   民営化とは、民間経営民間所有だ。政府の出資がないので、民間とイコールフッティング(競争条件平等化)になり民間とおなじ業務が可能になる。この点は、貯金や保険の金融では決定的に重要だ。金融はリスクを引き受けて収益をあげる。そこで政府からの出資があると、民間金融と対等になれず、民間との競争ができない。だから、政府出資があるうちは業務に制限が必要になる。これを株主の国民側からみれば、金融というリスクの対価で収益を得る性格上、業務の失敗で国民負担になったら困るので、あらかじめ業務に制限を課すということになる。

   民営化すれば、業務の制限がなくなるので、シミュレーションの結果、収益を年間1兆円稼げる可能性が出る。これが民営化を数値化した姿である。もちろん民営化は収益を確実に保証するものではないが、民間人の平均的な経営であれば、稼げる可能性は高い。逆にいえば、今政府が進めているように政府出資を残せば、業務の制約が残るので、収益は限界が出てくる。こうなると結局、郵政職員20万人以上を喰わすためには、最大年間1兆円の税金投入が避けられなくなる。

   このように、シミュレーションは、必ずしも将来を予測するものではなく、曖昧な点をなくし民営化の構造を数値化して明快にすることに意味がある。

   かつての野党民主党は、郵政民営化の対案を示し、独自の民営化後の経営内容のシミュレーションも出した。もっとも、そのときのシミュレーションは政府のものとほとんど同じなのに、対案がちがうという「羊頭狗肉」そのもので失笑を買った。今は与党だから、そうした無様な真似はできないだろう。といって、まじめに計算すれば、郵政民営化を見直した結果、税金投入は避けられないのが誰の目にもわかってしまう。

   また、大塚耕平・内閣府副大臣(郵政民営化担当)は、テレビ番組でかつて小泉政権の時と同様のシミュレーションを策定すると発言した。なんと言葉の軽いことか。計算はできるが、責任を負いたくないでは、話にならないだろう。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。


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