2024年 4月 20日 (土)

世を照らす光そのもの 震災の申し子たち【岩手・花巻】

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勢ぞろいした3人の申し子たち。左から凜太郎ちゃん、偉斗ちゃん、希光ちゃん =花巻市のまなび学園で
勢ぞろいした3人の申し子たち。左から凜太郎ちゃん、偉斗ちゃん、希光ちゃん
=花巻市のまなび学園で

(ゆいっこ花巻;増子義久)

   希光(のぞみ)ちゃんは震災の約1カ月半前に、偉斗(だいと)ちゃんと凜太郎(りんたろう)ちゃんは震災の約3カ月後にこの世に生を受けた。全員が瓦礫(がれき)の荒野と化した大槌町を故郷に持つ。みんな悲しい物語を背負っている。でも、将来の夢を託した親たちの願いが名前の背後からビンビン伝わってくる。「希光-偉斗-凜太郎」…。判じ物みたいにブツブツとつぶやいてみる。無邪気に遊ぶ3人の背中に一瞬、後光が差したように感じた。


   「いわてゆいっこ花巻」が2日、企画した「沿岸ママ&グランマお茶のみ会」(育児サロン)に3人の若いお母さんが集まった。あの大震災を経験した苦難の育児の日々。「ゆっくり座りたい」「この子と早くディズニーランドに行きたい」…。花巻市内の看護師、佐藤美代子さん(33)が寄り添うようにして育児の相談に乗った。


   希光ちゃんは昨日、満一歳の誕生日を迎えた。「初孫だったし、この子は祖父母にとって宝物みたいな存在でした。でも二人とも津波に流され、父はまだ見つかっていません。小学校の避難所で生後1カ月余り、この子をじっと抱いていました。ミルクもおしめもなくって…。それでもこんなに元気に育ってくれました」。母親の阿部律子さん(30)はそう言って目頭を押さえた。


   「夫の忘れ形見というか生き形見というか…」。偉斗ちゃん(8カ月)の母親、堀合祐美さん(23)は母乳を含ませながら涙をぬぐった。盛岡市の運送会社に勤めていた夫の高弘さん(当時23)はあの日、商品を届けるために大槌に向かった。それが最後だった。乗っていた小型トラックは見つかったが、高弘さんはまだ行方不明のままだ。「流行(はやり)の名前は嫌だ。男らしい強い名前が良いと。それで"だいと"と。『大都』という字を当てたかったみたいだけど、画数がどうもって。『偉斗』は 夫の両親が考えてくれました。何としてでもこの子を夫に会わせてあげたかった…」


   一番後輩の凜太郎ちゃん(生後7カ月)の母親、 佐々木一愛(かずい)さん(23)は出産のために東京の勤め先から大槌の実家に戻っていた時に津波に襲われた。夫の父親、それに姉とその2人の子どもの4人の命が奪われた。「下の子はまだ見つかっていません。犠牲になった2人のいとこの分まで生き抜いて欲しいと願っているんです」と佐々木さん。


   最初は人見知りしてギコチなかった3人の申し子たち…。おもちゃを手にした途端に奪い合いをしたり、泣いたり笑ったり…。若い母親たちの顔にこぼれるような笑顔が浮かんだ。「この子らを世の光に」。ふと、福祉の父と言われた糸賀一雄(故人)の言葉が頭をかすめた。そう、この子らに光を当てるのではなく、まさにこの子らこそが世を照らす光そのものなのである。

「にらめっこしましょう」と凜太郎ちゃん(左)と偉斗ちゃん。左端が看護師の佐藤さん =花巻市のまなび学園で
「にらめっこしましょう」と凜太郎ちゃん(左)と偉斗ちゃん。左端が看護師の佐藤さん
=花巻市のまなび学園で
仲良しになった3人はさっそく、何やらヒソヒソ話を…=花巻市のまなび学園で
仲良しになった3人はさっそく、何やらヒソヒソ話を…=花巻市のまなび学園で


ゆいっこ
ゆいっこネットワークは民間有志による復興支援団体です。被災地の方を受け入れる内陸部の後方支援グループとして、救援物資提供やボランティア団体のコーディネート、内陸避難者の方のフォロー、被災地でのボランティア活動、復興会議の支援など、行政を補完する役割を担っております。
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