2024年 4月 28日 (日)

高橋洋一の民主党ウォッチ
原発再稼働、地元に決定権持たせよ 万が一で困るのは誰なのか

   大阪では10日(2012年4月)、府と市の合同会議が、原発再稼働のための「8条件」(メモ参照)を提示した。

   原発事故のA級戦犯ともいえる原子力安全・保安院や原子力安全委員会がそのまま、原発再稼働の安全性について形ばかりのチェックをやって「安全」と言われても信用できない、という極(ごく)まっとうな感覚だ。

「信用しろ」という方がおかしい

   この8条件を満たさずして「信用しろ」という方がおかしい。

   こういう検討は、本来なら、政府がやっていないといけない話。藤村修官房長官は「支離滅裂」とか発言したが、中央政府がやるべきことをやらないから、地方から突き付けられていることが分かっていない。もっとも、その後、意見は聞くとも話した。

   このやりとりは典型的な中央集権発想である。あくまで決定主体は中央政府であり、その参考として地方の意見も聞いてやるというスタンスだ。原発再稼働では、8条件の内容を進めて、決定権を地方が持つように地方分権すればいいと思う(ただし、規制機関は中央政府でもいいとか、中央政府の役割は残る)。

   地方分権というと、中央政府の経産省官僚は地方に任せられないという。しかし、中央政府の保安院官僚が書いたとおぼしき安全基準を中央政府の4大臣会合(総理、官房長官、経産大臣、原発担当大臣)で政治決定して、それで地方が納得しろといわれても、今回のような決定を急いだプロセスではまず無理だろう。

4大臣は「地元」に永住する覚悟を

   この安全基準は、馬淵澄夫・元国交相も「無責任きわまりない」と批判しているしろものだ。ちなみに、この安全基準は、福島原発では地震そのものによる被害が正確には確認できていないにも関わらず、津波による被害だけが想定されて作られているのはおかしい。さらに、これから基準をみたせばいいという項目があるのも、素人にはわかりにくい。

   いずれにしても、万が一で困るのは地元なのだから、決定手続きとしては地元を関与させないとダメだ。いっそのこと、これで地方が反乱を起こし、地方分権を進めたらいい。4大臣は政治責任をとるというが、そういうなら大飯原発がある福井県や隣接の滋賀県などに永住するくらいでないと覚悟が見えてこない。福島原発事故でも誰も責任をとっていないと言われたら、「政治責任」がいかに軽い言葉であるかわかる。


<メモ:再稼働8条件>

(1)国民が信頼できる規制機関として3条委員会の規制庁を設立すること

(2)新体制のもとで安全基準を根本から作り直すこと

(3)新体制のもとで新たな安全基準に基づいた完全なストレステストを実施すること

(4)事故発生を前提とした防災計画と危機管理体制を構築すること

(5)原発から100キロ程度の広域の自治体同意を得て安全協定を締結すること

(6)使用済み核燃料の最終処理体制を確立し、その実現が見通せること

(7)電力需給について徹底的に検証すること

(8)事故収束と損害賠償など原発事故で生じる倒産リスクを最小化すること


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2005年から総務大臣補佐官、06年からは内閣参事官(総理補佐官補)も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「財投改革の経済学」(東洋経済新報社)、「さらば財務省!」(講談社)など。


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