2024年 5月 3日 (金)

関空と伊丹空港が経営統合 「新関西国際空港会社」、課題山積のテークオフ

   関西国際空港と大阪(伊丹)空港が2012年7月1日に経営統合し、「新関西国際空港会社」による一体運営が始まった。新関空会社は同13日、経営戦略を発表、関空の国際線の着陸料を10月から5%値下げするなどして利用増を図り、2014年度の両空港の旅客数を2011年度比で23%増に当たる計3300万人に引き上げる計画だ。

   国内初となる空港同士の統合で、激化する世界の国際競争に勝ち抜こうという新関空会社。その戦略はうまく進むだろうか。

2014年に向けて高い目標

伊丹空港(09年撮影)
伊丹空港(09年撮影)

   経営戦略では、2014年度の両空港の発着回数を2011年度比で30%増の計30万回に増やすほか、2014年度の売り上げを同26%増の計1500億円に引き上げるなどの目標を掲げた。

   新関空会社は4月に政府の全額出資で設立された。両空港の経営統合の狙いは、それぞれの収益性を高めて、両空港の運営権売却(コンセッション)につなげることだ。その背景には1兆円超の有利子負債にあえぐ関空の財務改善という目標がある。

   関空は、伊丹が騒音問題で便数を増やせない制約を打開しようと、沖合5キロに埋め立てて建設された。しかし埋め立てはコストが高くつき、関空は開港以来、負債の足かせから逃れられず、利息の支払いで営業利益のほとんどが消えてしまう状況に陥っている。そこで関空と、健全経営をしている伊丹の運営権を抱き合わせで売却し、世界に立ち向かう態勢を築こうという計画が始まった。運営権売却は2014年度を目指している。

ターミナルビルの収益向上めざす

   このため、新関空会社の当面の最大の課題は、経営権売却に有利に働くよう、両空港の収益力を向上させることだ。経営戦略で掲げた数値目標を達成するため、同社は相次ぎさまざまな手を打つ。その一つが、来年夏をめどに予定している伊丹のターミナルビルの買収だ。ビルを運営するターミナル会社は大阪府市などの自治体が50%、民間が50%を出資するが、新関空会社は全株を買い取り、ビルを改修して集客力を上げ、売り上げ増につなげたい考えだ。

   また、国内でも本格化してきた格安航空会社(LCC)の誘致に力を入れるほか、国際貨物ハブ空港としての機能強化を図る方針で、関空での深夜・早朝の国際線貨物便の着陸料を半額に引き下げる制度もこの7月から導入した。

   しかし、収益拡大の方向性が明確になったとは言えない。急速に経済成長が進むアジアでは空港間競争が激化しており、韓国・仁川やシンガポール・チャンギなどは、着陸料を関空の3分の1程度に抑えている。国内では、羽田などの首都圏空港に比べ、関空が高収益につながるビジネス需要が小さいという問題もある。国内外の競争が一段と激しくなる中、目論見通りの需要を引き出せるかは不透明で、いっそうの工夫と努力が不可欠だ。

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