東京の私立大学病院職員の44%もが院内暴力を経験し、退職したいと思ったり、死にたいと思ったりした職員も少なくないことが分かった。2013年3月29日、私立大学病院医療安全連絡会議(事務局・東京慈恵会医大病院)が発表、医療側と患者側の信頼関係の構築を訴えた。看護師に多いセクハラ被害調査は2011年12月、大学病院本院11病院の職員約29000人を対象に行われ、22738人(78.2%)が有効回答を寄せた。過去1年間に患者や家族などから院内暴力を受けたと感じた職員は44.3%。内訳は暴言が41.5%、暴力14.8%、セクハラ14.1%だった。暴言は「ふざけるな」などの言葉や苛立つ態度、鋭い目つきでにらまれた、など。暴力は「叩かれた」「蹴られた」「つねられた」「殴られた」「物を投げつけられた」の順。セクハラの4割は体を触られるなどの身体的行為だった。暴言は職種による違いは少なかったが、暴力とセクハラは看護師の率が高かった。受けた時の気持ちは「腹が立った」(16.3%)「怖かった」(12.9%)「驚いた」(11.0%)の順だが、「退職したいと思った」(3.7%)、「死にたかった」(0.2%)との答えもあった。「退職したいと思った」1159人のうち看護師は772人、事務職177人、医師136人。「死にたかった」58人は看護師30人、医師14人、事務職7人など。「要因は医療側にもあったと思うか」の質問には45.6%が「あった」と答え、「説明や確認の不足」「待ち時間が長い」「医療者の態度」などを挙げた。対応は「我慢した」(24.8%)が最も多く、「謝罪した」「人を呼んだ」の順。12.3%の職員はだれにも話していなかった。 発表者の1人、慈恵医大病院の森山寛院長は「患者さんの不安、状況の改善に私たちも努力するが、高度で安全な医療のため、患者さんやご家族にぜひ理解してもらいたい」と話した。(医療ジャーナリスト田辺功)
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