2024年 4月 23日 (火)

人口減に対策本部【岩手・大槌町から】(53)

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旧中心市街地で本格化し始めた復興事業の進行具合は町の人口問題に直接影響します=2014年6月25日、大槌町
旧中心市街地で本格化し始めた復興事業の進行具合は
町の人口問題に直接影響します=2014年6月25日、大槌町

   震災前と今の人口を比べて2割も減った大槌町が、人口減対策に乗り出しました。6月に町役場に人口問題対策本部会議を設置、定住人口を増やすために知恵を絞ります。実効ある具体策が見つかるかどうか。復興まちづくりの行方がかかっています。


   大槌町の人口は、震災前の2011年3月11日現在で1万5,994人でした。それが、今年5月1日現在で1万2,657人と、3,337人減りました。減少率は20.8パーセント。多くは震災で犠牲になった人たちや、町外に転出した人たちです。現在、現住所を大槌町に置いたまま、町外に避難している人たちも少なくなく、実際の町の人口は、さらに減少していると見られています。


   震災前から進んでいた大槌町の過疎、高齢化は、震災で拍車がかかっています。そんな中、2040年に多くの市町村が消滅する危機に直面する、という日本創成会議の試算がこの5月に発表され、町の危機感が高まりました。


第1回人口対策本部会議であいさつする碇川豊町長=2014年6月9日、大槌町役場
第1回人口対策本部会議であいさつする碇川豊町長
=2014年6月9日、大槌町役場

   大槌町の第1回の人口問題対策本部会議が6月9日に開かれました。本部長の碇川豊町長があいさつし、「町として総合的な取り組みが必要だ。各部署で、人口減少に歯止めをかける施策を検討してほしい」と呼びかけました。会議では、「若い人が町に定住するためには働く場が必要だ」「所得が低くとも大槌では満ち足りた生活が可能。暮らしやすさの指標、幸福度の指標を探ろう」といった意見が出ました。


   第2回目の会合は7月2日に開かれ、岩手大学農学部の広田純一教授が「待ったなし大槌町~いかに人口減少を食い止めるか」と題して講演しました。広田教授は人口減対策として、「高卒世代の流出抑制」「若者世代のUターン促進」「拡大コミュニティーの形成」など5項目を政策目標にあげ、成功例として、ゆずでむらおこしの高知県馬路村や、はっぱビジネスの徳島県上勝町などを紹介。最後にこんな言葉で締めくくりました。「震災で交流人口が拡大し、大槌の知名度もアップしている。豊かな自然、湧水、イトヨといった強みもある。これらを生かしながら地域コンセプトを練り上げて、生き残りに向けた戦略を構築してほしい。腹をくくってやるしかない」


町役場の職員を対象に開かれた広田純一岩手大学教授の講演会=2014年7月2日、大槌町役場
町役場の職員を対象に開かれた広田純一岩手大学教授の講演会
=2014年7月2日、大槌町役場

   具体的な対策はこれからですが、例えば、次のような施策が検討されそうです。▽若者が町に残りやすいよう子育て支援を充実させる▽大槌に似合った産業を起こし企業を誘致する▽地域に根付く祭りや郷土芸能を全国発信し交流人口を増やす▽甚大な被害を被った大槌を防災教育の拠点として修学旅行生を受け入れる▽人形劇「ひょっこりひょうたん島」のモデルとされる蓬莱(ほうらい)島やサーファーが集う浪板海岸などの名勝を売り出す▽町の海産物や山の幸で特産品やB級グルメを開発する▽町出身者の名簿をつくって「ふるさと会」を組織し定期的に町の情報を提供する……。


「ひょっこりひょうたん島」のモデルとされる蓬莱島は町民の心のよりどころです=2014年7月9日、大槌湾
「ひょっこりひょうたん島」のモデルとされる蓬莱島は町民の心のよりどころです
=2014年7月9日、大槌湾
震災後もこんこんと湧きだす湧水を生かす知恵が求められています=2014年6月22日、大槌町
震災後もこんこんと湧きだす湧水を生かす知恵が求められています
=2014年6月22日、大槌町

   震災で大槌町は壊滅的な打撃を受けました。その一方で、町の資源を見直そうとする機運が高まっています。大槌ファンも全国に広がっています。ピンチをチャンスに結び付けられるかどうか。大槌町の挑戦が始まります。

(大槌町総合政策課・但木汎)


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