2024年 4月 20日 (土)

対日協力した韓国人の名簿「親日人名辞典」 そこに朴正煕氏の名前が載っている理由

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   韓国の民間団体が編纂した「親日人名辞典」がある。日本の統治時代に対日協力した韓国人の名簿で、2009年に出版された。この場合「親日」は、反民族の否定的な意味合いで使われ、批判の対象となるのは間違いない。

   名簿の中には元大統領の朴正煕氏も含まれる。朴槿恵大統領の実父だ。「親日認定」されたはずが、韓国における評価は今も決して悪くないようだ。

ソウル市内のすべての中・高校に配布

朴正煕氏は「親日」とされるが
朴正煕氏は「親日」とされるが

   在日本大韓民国民団の「民団新聞」2009年11月25日付記事によると、韓国の大学が調査会社に依頼して実施した「韓国の発展に最も貢献した大統領」のランキングで、1500人の回答者のうち朴正煕氏を選んだ人が75.8%に上り、2位の金大中氏(12.9%)以下を大きく引き離したという。ややデータが古いが、人気の高さは歴代大統領で群を抜いていると言えよう。

   その一方で、「親日人名辞典」にその名が記されている。旧満州の軍官学校に入学した後、陸軍士官学校に編入、卒業。「満州国軍」に属して日本側に立って戦争に参加した経歴を持つ。軍官学校入学に際しては「血書」まで書いたとされる。2014年12月19日付の韓国・ハンギョレ新聞日本語電子版によると、ソウル市議会は人名辞典を市内すべての中・高校に配布するための予算案を通過させた。市会議員のひとりは、「教師が歴史授業をする際に親日派について正しく知ったうえで教え、民族正当性を正す趣旨」とコメントしている。

   韓国の「対日協力者」に対する風当たりは強い。盧武鉉政権下の2004~05年にかけて、「過去の清算」として「日帝強占下親日反民族行為真相究明に関する特別法」「親日反民族行為者財産の国家帰属に関する特別法」が制定された。戦時中に日本に協力した人物を調査し、本人やその子孫の財産を没収することを認めたのだ。実際に「親日」と断定された人物の子孫が、この法律が違憲ではないかと訴訟を提起したが、韓国の裁判所は2011年に訴えを退け合憲判決を下した。

   こうした風潮を考えれば、朴氏が現代社会で糾弾されていても不思議はない。だが実際は、その評価は単純ではなさそうだ。例えば2009年11月18日の中央日報日本語電子版のコラムは、当時発刊されたばかりの「親日人名辞典」、特に朴氏の記載について取り上げている。だが、対日協力に対する批判一辺倒ではない。

「とにかく日本人は韓国人に対してひどいことをした」という学校教育

   コラムでは朴氏が、戦時中日本に協力した事実は消せないとしてその名を人名辞典に載せなければならないと主張。半面、「歴史的評価は人生全体でされるものだ。一部分で親日行為があると言って人生全体が親日ではない」として、韓国独立後に朴氏が建国や近代化に貢献したのだから「彼は愛国者だ」と評した。

   2014年9月7日付の朝鮮日報日本語電子版も、朴氏が韓国経済の発展をけん引した指導者である点を、政治学が専門の大学教授の言葉を引用して挙げた。独裁や人権弾圧、不正や腐敗の責任者という「負」の面もあるが、産業化や近代化を引っ張った功績は認めるべきだと強調している。

   確かに朴氏は陸軍士官学校を卒業しており、また1965年の日韓基本条約締結を果たした。だが、拓殖大学教授の呉善花氏は、月刊誌「Voice」電子版2013年4月18日付の寄稿文の中でこう説明した。

「朴正煕大統領は16年ものあいだ政権を握り、いわば独裁主義を採ってきたのである。じつは韓国では、この時代にもっとも強烈な反日教育が行なわれていた」

   続けて、「『とにかく日本人は韓国人に対してひどいことをした』ということを学校教育で徹底的に教えただけでなく、マスメディアも一貫してそのような報道を行なった」と解説。現在60歳前後の人はこうした教育を受けており、そこに娘の朴槿恵氏も含まれる。

   事実であれば、戦前は「親日」だった朴氏だが大統領となってからは一気に「反日教育」を推し進めたわけだ。こうした点から、対日協力の過去は薄められているのかもしれない。そのうえ国家の経済発展に寄与しただけに、韓国内で今も高い評価が維持されているとも考えられそうだ。

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