2024年 4月 20日 (土)

慰安婦検証記事「謝罪なし」、池上コラム「不掲載」 いずれも木村・朝日前社長の意向だった

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   朝日新聞のいわゆる従軍慰安婦をめぐる報道を検証する第三者委員会(委員長:中込秀樹・元名古屋高裁長官)が2014年12月22日、検証結果をとりまとめた報告書を公表した。

   8月5日、6日に掲載された検証記事では、済州島で女性が強制連行されたとする「吉田証言」が「虚偽」だったとして関連記事を取り消したが、謝罪がなかったとして批判を浴びた。これに加えて、謝罪がなかった点を指摘した池上彰氏のコラムの掲載を見送ったことで、さらに批判が高まることになった。今回の報告書では、いずれの判断も木村伊量(ただかず)前社長の意向が強く反映されていたことが明らかになった。社長自身が、事態を悪化させていたことが明らかになった形だ。

7ページの記事を4ページに縮小、続報も掲載見送りに

第三者委員会の中込秀樹委員長(右)から報告書を受け取る朝日新聞社の渡辺雅隆社長(左)
第三者委員会の中込秀樹委員長(右)から報告書を受け取る朝日新聞社の渡辺雅隆社長(左)

   調査委員会は10月10日から12月12日にかけて木村氏以下、延べ50人の役員、従業員、関係者にヒヤリングを行った。

   検証記事の掲載は、政府が河野談話発表の経緯を検証することになったことを受けて掲載された。7月上旬時点で、検証チームが作成した記事は7ページにわたるものだった。だが、この分量では「大げさになりすぎ一般読者に何事かとの印象を与えるとの懸念」が経営幹部から出たため、4ページに縮小された。ただ、この時点では「おわび」を載せる方針だった。

   「GE(ゼネラルエディター、渡辺勉氏)の強い意向もあり、検証チームの方針としては、訂正しておわびをする方針で固まり、7月15日までは、1面掲載の論文及び過去記事において訂正しておわびする旨を明記した紙面案が作成された」

   だが、7月16日に木村氏、危機管理担当の経営幹部、GEらが協議した場で、木村氏がおわびに反対する意見を出した。これをきっかけに、役員らによる「拡大常務会」には、おわびを入れない案が提出され、最終的に掲載された紙面では謝罪はなく、杉浦信之・編集担当役員(当時)の署名入り記事で「反省」を表明するにとどまった。

   当初は、検証記事に対する反響に対して続報を出す方針だったが、検証記事掲載直後から「おわび」がないことをはじめとする強い反発が起こったため、「批判に逐一反論すると火に油を注ぐことになって、危機管理上望ましくないと判断」した。河野談話が吉田証言に依拠していないことを指摘する記事を8月28日に掲載した以外は、続報の掲載を見送った。

コラムで検証記事を取り上げるように依頼したのは朝日新聞側だった

   池上氏のコラム不掲載についても、木村氏の意向が強く働いていた。

   そもそも、コラムで検証記事を取り上げるように依頼したのは、朝日新聞側だった。コラムは8月29日に掲載予定で、池上氏から原稿が送られてきたのは8月27日午後。担当者は「過ちは潔く謝るべきだ」という見出しをつけた。

   当時、検証記事に関する記事は木村氏をはじめとする経営幹部が目を通すことになっており、池上氏のコラムについても木村氏らがゲラに目を通した。

   渡辺GEは「掲載することで問題ないと考えていた」が、27日夕方になって「木村が難色を示しており、このままでは掲載できない」として、(1)違うテーマで書き直してもらう(2)掲載するのをやめる(3)見出しをマイルドにする、のいずれにできないかをオピニオン編集部のコラム担当者に打診。これに対して、オピニオン編集部は(1)については、そもそも朝日新聞側から依頼したテーマで、これまで基本的に内容に注文をつけないことでやってきたので難しい、(2)については、

   「そのようなことをすれば池上氏はコラムを打切りにさせて下さいと言うに違いなく、そうすると連載打切りは避けられず、非常に不自然な終わり方になってしまう、この場合、週刊誌等に気付かれ池上氏の記事を握りつぶしたとバッシングを受けることになると危惧される上、これまで朝日新聞を信頼して読んでくれている読者が離れてしまう」

と反発。その結果、(3)が採用されることになり、見出しを「訂正遅きに失したのでは」とマイルドに変更した上で杉浦氏が木村氏と話すことになった。だが、その結果も「このままでは掲載できない」となった。

「掲載しない判断は経営上の危機管理の観点からのものだ」

   渡辺GEとオピニオン編集部は、

「これまでは慰安婦を巡る問題の議論だったのが言論の自由を巡る問題に変わってしまいフェーズが変わる、リベラルな知識人や読者からも批判されてしまう」

と反発したが、杉浦氏は、

「池上氏の連載が打切りになる可能性も踏まえたうえでのリスク判断だ、連載打切りのリスクよりもコラムを載せる方がリスクが高いと判断した、掲載しない判断は経営上の危機管理の観点からのものだ、2014年検証記事で謝罪しないという方針は社として決定したものだ、読売新聞が朝日新聞の慰安婦報道に関する連載を始めており、朝日新聞のブランド価値を著しく毀損するとして週刊文春の広告掲載も拒否した、社長の、逆風に負けず頑張るぞという言葉がホームページにアップされるタイミングであり、このタイミングで池上氏のコラムをこのまま掲載することはできない」

などと説明。これを受けて28日夕方に渡辺氏と担当者が池上氏に掲載見合わせについて説明したところ、池上氏からは連載打ち切りの申し入れがあった。朝日新聞側は話を持ち帰り、対応を検討している間に掲載見送りが週刊文春や週刊新潮に伝わり、朝日新聞への批判が加速。まさにオピニオン編集部が懸念していた結果になった。

   9月11日の記者会見では、木村氏は、

「私は感想はもらしたが、編集担当の判断に委ねた」

と述べていた。さらに、杉浦氏が木村氏の意向を忖度した可能性については、木村氏が、

「忖度したことはないと、私は認識している」

と否定。杉浦氏も同様に忖度を否定した。記者会見での答弁と報告書の事実認定が大きく食い違っていることになる。

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