2024年 4月 17日 (水)

駅伝のたすき「投げ渡しは失格」 厳しすぎる判定のように思えるが...

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   全国都道府県対抗男子駅伝大会で、「悲劇」が起きた。中継所目前で倒れた走者が、たすきを次の走者に渡そうと思わず前方へ投げてしまい失格となったのだ。

   規約上、たすきは手渡しでなければ認められない。残酷とも言える判定に、テレビ中継の解説を務めた宗茂さんは「ちょっと厳しいですね」と発言した。

日本陸連の基準は「たすきは手渡さなければならない」

たすきを何とかつなぎたかった(写真はイメージ)
たすきを何とかつなぎたかった(写真はイメージ)

   愛知県チームの1区走者の高校生が、2区の中継所目前で突如両手をついて倒れ込んだ。一度は立ち上がるが、フラフラとコースを外れる異常事態。はいつくばって、手を伸ばして待つ次の走者に何とかたすきを渡そうと進む。最後は右手に握りしめたたすきをポーンと前に放り投げた。次の走者がつかみ、駆け出す。この時、近くの審判が「あっ」と驚いた表情に見え、2区走者も少々ちゅうちょするように振り返ったが、結局はそのまま去ってしまった。2015年1月18日、広島県で行われた「第20回全国都道府県対抗男子駅伝大会」での出来事だ。

   悲報は3区の途中でもたらされた。NHKのテレビ中継でアナウンサーが、「愛知は1区走者がたすきを投げたために失格、順位なし、(2区以降は)区間記録のみ認められる」と告げたのだ。この日の解説は、マラソンで2度の五輪出場を果たし、指導者としても多くの選手を育てた宗茂さん。「たすき投げ」が失格と聞き、思わず「あれぐらいは、という気がするんですけれど、ちょっと厳しいですね」と漏らしたのだ。

   駅伝を含む国内の陸上競技を統括する日本陸上競技連盟は、「駅伝競走基準」を定めている。その第9条にはたすきに関する取り決めがあり、こう書かれている。

「たすきは必ず前走者と次走者の間で手渡さなければならない」

   今回は珍しいケースだが、「投げ渡し」は明白なルール違反。宗さんが日本陸連の規約を知らないはずはないが、意識を失いかけながらも必死でたすきをつなごうとした高校生走者の姿に、思わず「ちょっと厳しい」と口を突いたのかもしれない。

   では、たすきを投げて手放した時点で失格なのか。日本陸連事務局に電話取材すると、もし投げた後にルール違反だと気づいて拾い直し、中継所まで持ち運んで次の走者に手渡せば成立、たすきはつながったと判定されるという。

「新・山の神」は失格した走者を気遣う

   愛知の1区は高校生、2区は中学生だった。日本陸連の話では、中高生の駅伝大会でも「たすきは手渡し」というルールが徹底されている。とは言え、1区走者は脱水症状でおそらくは正常な判断がつかない状態だった。2区の中学生も、まさかの事態にパニックとなって、「早くたすきをもらってスタートしなきゃ」と焦る気持ちが生じたのは想像に難くない。「規則は規則」だが、言わば極限状態に置かれた10代のふたりに冷静な判断を求めるのは酷とも言えそうだ。

   実は同じ愛知チームには、2015年1月2、3日に行われた箱根駅伝で青山学院大学の初優勝の立役者となった、神野大地選手が最終7区にエントリーしていた。箱根の山登り区間5区で独走し、「新・山の神」と言われたランナーだ。愛知のチームとしての記録は残らなかったが、複数の報道によると神野選手はレース後、失格となった1区の選手を気遣ったという。

   マラソン中継をはじめ陸上競技の解説で知られる金哲彦さんは1月19日、自身のフェイスブックで「たすき問題」に触れた。「中継所の審判員も『失格』の判断は辛かったと思います。ほんの少しなんだからなんとかしてあげたい」と、審判の心情を思いやった。だがテレビで中継され注目度の高い今大会で、ルールを曲げるわけにはいかなかったと続けた。この投稿に、レースを見ていたという多くの人が感想を寄せたが、「ルールは厳格に適用されるべきで、審判は正しい判断をした」との声が大半を占めた。また宗茂さんが「あれぐらいは、という気がする」と失格した走者に同情を寄せるコメントしたのが印象的だったとの声も出た。

   金さんは最後に、残念な結果に終わったランナーたちにこうエールを送った。

「失格になってしまった本人と愛知県の選手達にはしっかり立ち直って、これからの糧にして欲しいと思います」
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