イスラム国に拘束されていたジャーナリストの後藤健二さんを殺害したとする動画が公表された直後に安倍晋三首相が発表した談話が、波紋を広げている。「その罪を償わせる」と、日本の首相としては異例の強い表現を含んでおり、これを「報復」の宣言だと受け取った海外メディアも少なくないようだ。ただ、記者会見のやり取りでは具体的にどうやって「償わせるか」は明らかになっておらず、現段階では安倍首相の「決意表明」にとどまっている様子だ。英語版の談話では「ひどい行動の責任を取らせる」安倍首相の談話が波紋を広げている(2014年11月撮影)2015年2月1日早朝に発表された安倍首相の談話で最も注目されているのが、「テロリストたちを絶対に許さない。その罪を償わせるために、国際社会と連携してまいります」という部分。ここには、安倍首相の強い意志が反映されているとみられ、日経新聞はこう報じている。「安倍晋三首相は、事務方が用意していた『首相声明』に自ら手を入れた。『テロリストたちを決して許さない』に続けて『その罪を償わせる』と書き加えた」首相官邸ウェブサイトに掲載された英語版の声明では、この部分は「彼らのひどい行動の責任を取らせるために、国際社会と協力していく(Iwillworkwiththeinternationalcommunitytoholdthemresponsiblefortheirdeplorableacts.)」となっており「罪を償わせる」よりも表現が弱くなっている。だが、海外メディアは日本語の表現に着目したようだ。ニューヨーク・タイムズ紙は「日本の平和主義から離れ、安倍晋三首相は殺害への報復を誓う」という見出しで、安倍首相の談話を「テロリストに代償を払わせる(tomaketheterroristspaytheprice)」と紹介。「指導者が過激派の暴力に直面した際、西側世界ではこういった報復宣言は一般的かもしれないが、対立を嫌う日本では聞かれなかった。...これまでは」と指摘した。民主党の長島昭久衆院議員(元防衛副大臣)の「字義通り実行犯を捕え処罰するとの意味か?この欧米流の言い回しは、これまでの日本外交にはなかった。欧米並みの実力行使まで突き進むつもりか?」というツイートも紹介し、日本外交が方針転換する可能性を印象付けた。英BBCは「尋常ではないほど強い言葉」英BBCは、イラクへの自衛隊派遣に関連して、自衛隊撤退を求める武装勢力が日本人男性を拘束・殺害した際も、小泉純一郎首相(当時)が撤退を拒否したことを引き合いに、「安倍首相はこの姿勢を強めており、尋常ではないほど強い言葉で『日本はテロに屈しない』し、『彼ら(テロリスト)に罪を償わせる(tomakethem[theterrorists]payfortheirsins)ために国際社会と行動を共にする』と明言した」と報じた。ただ、政府としては「償わせる」方法は明らかではなく、安倍首相の「決意表明」が先行しているとみられる。菅義偉官房長官は2月2日午前の会見で「この罪を償わせるために国際社会と連携していく。そういう意味では、様々な手段については、徹底して追及していきたい」と述べるにとどめている。安倍首相は2月2日の参院予算委員会でも、「まさに罪を償わさせるということは、彼らが行った残虐非道な行為に対して、法によって裁かれるべきであろうと、こう考えているところ」と述べている。同日午後の会見で「法で裁く」の具体的内容について問われ、菅官房長官は、国際刑事裁判所を例として挙げた。「国際刑事裁判所だとか、いろんなことの可能性を念頭に置いている。まさに警察も千葉、東京に捜査本部をつくった。そういう形の中で、できることはすべてやる」「『例えば』の話で、国際刑事裁判所の話をしたが、このテロ撲滅に対してですね、テロリストというのは法の裁きを必ず受けさせるという国際協力の中で、そうしたことも視野に入れながら、徹底して、このテロ撲滅に向けての総理の強い意志」国際刑事裁判所は2011年、10年に起きたコートジボワール危機で「人道に対する罪」を犯したとして、同国のローラン・バグボ前大統領を逮捕・収監した実績があるが、イスラム国に対して同様の行動を起こせるかは不透明だ。
記事に戻る