2024年 4月 25日 (木)

日本勢のテレビ事業、世界から続々撤退 国内の「4K」で稼ごうという戦略の成否は

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   かつて日本の電機産業の花形だったテレビが、いよいよ岐路に立っている。韓国・中国勢と正面から競争するのを避けて世界展開を撤退縮小し、ブランド認知度の高い国内で「4K」などの高精細製品で稼ごうという戦略だ。

   インドなど局地戦でなお踏ん張るソニーを除けば、現状は海外で完敗。今もなお世界で活躍を続ける日系自動車メーカーとは大きな差がついてしまった。

旧松下は世界に先駆けて中国にテレビ工場を建設

ソニーは4Kブラビアで攻める(画像はソニーのホームページより)
ソニーは4Kブラビアで攻める(画像はソニーのホームページより)

   「なんぼでも、てったい(手伝い)まっせ」。大阪府門真市のパナソニックの本社近くにある「松下幸之助歴史館」では、創業者のこんな肉声を聞くことができる。1970年代後半に中国の実力者、鄧小平氏が来日し、幸之助氏に技術開発などの協力を要請したのに対し、幸之助氏が関西弁で快諾を伝えたセリフだ。

   以後、旧松下電器産業(現パナソニック)は世界メーカーに先駆けて中国にテレビ工場を建設。ピーク時はテレビだけで3拠点あった。中国の工業化に貢献した「松下(中国読みでソンシャー)」は、多くの中国人が今も敬意を持って親しむブランドとされる。

   しかし、赤字を垂れ流すならば工場閉鎖もやむを得ない。パナソニックは2月2日、中国の液晶テレビ生産から撤退すると発表した。最後に残った山東省の組み立て工場を閉め、約300人の従業員は基本的に解雇する。

東芝は海外でのテレビの開発・販売から撤退

   パナソニックは米国向けにテレビを生産するメキシコ工場も売却する方針。今後、中国と米国でテレビ販売は続けるが、製品はOEM(相手先ブランド製造)で調達したもので対応する。中国、米国というテレビ事業の赤字の元凶となった拠点に大ナタをふるい、まずは止血を図る。

   1960年に国産カラーテレビ1号機を世に出した東芝は、さらに一歩進んだ構造改革に踏み込む。1月29日に海外でのテレビの開発・販売から撤退すると発表したのだ。北米ではブランド力はまだ残っていると見られるため、台湾のEMS(電子機器受託製造サービス)企業「コンパルエレクトロニクス」に「TOSHIBA」ブランドを供与。コンパルが開発・製造から販売・サービスまで一貫して手がけ、東芝としてはライセンス事業に移行する。欧州やアジアでもライセンス供与先との協議を続けている。

ソニーはテレビ事業を分社化、コスト削減急ぐ

   東芝のテレビ事業は、日本がトントンで海外が赤字。海外をライセンス供与ビジネスに切り替える一方、マザーマーケットの日本だけは高品質・高価格の製品を投入し利益を確保したい考えだ。

   液晶テレビの先駆者として21世紀初頭に躍進したシャープは、今やその面影もなく主要取引先銀行に支えられる経営再建企業だ。構造改革は待ったなしで、リストラを続けてきたテレビ事業にさらなるメスを入れる。

   まず欧州の生産・販売から撤退した。2014年、ポーランドの工場を売却し、この1月には東芝のようなライセンス供与ビジネスに切り替えた。北米向けのメキシコ工場が売却対象として目下の焦点で、売却が成立すればライセンス供与で事業を維持する方針だ。アジア向けのマレーシアと中国の工場も売却が検討されている模様だ。

   ソニーは14年、テレビ事業を分社化。基本ソフト(OS)に米グーグルのアンドロイドを採用し、システムLSIの設計を台湾企業に外注するなどスリム化し、固定費削減などの効果が出始めている。

   撤退戦を続ける日本勢だが、一定の規模がなければ部品調達の価格面で不利になるなどリスクもある。国内に特化することで海外のブランド力が落ちれば他の海外事業にもじわりと影響する懸念もある。止血した後の現実感のある戦略が問われている。

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