2024年 4月 20日 (土)

「爆売れ」の元少年A手記、書店は対応に苦悩 「通常通り」「販売せず」「注文販売だけ」...

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   1997年に神戸連続殺傷事件(酒鬼薔薇聖斗事件)を起こした「元少年A」(32)による手記「絶歌」が出版されてから1週間が経った。

   2015年6月11日の発売以降、都内や通販サイトでは「品切れ」が相次ぎ、トーハンと日版の週間ベストセラーランキングではそれぞれ初登場1位となった。出版元の「太田出版」は初版10万部に引き続き5万部の増刷を決め、25日から順次配本するという。だが、同本の販売を巡っては書店によって対応にばらつきが出ている。

  • 元少年Aによる手記「絶歌」
    元少年Aによる手記「絶歌」
  • 元少年Aによる手記「絶歌」

自粛決めた「啓文堂書店」に反響メール&電話100件以上

   東京都と神奈川県で「啓文堂書店」を展開している京王書籍販売(東京都多摩市)は当初から販売を自粛している。

   手記の内容を確認後、全38店舗で取り扱わないことを決めたという。各店では注文も受け付けておらず、客から要望があった場合は断っているそうだ。この決定について、同社担当者は「遺族の心情に配慮した」と説明する。

   「絶歌」に対しては「少年犯罪の加害者の心理を理解する上で社会的意義がある」という意見もあるが、「元少年A」という匿名での出版であること、印税の使い道が不明であることなどから批判の声は多い。特に、遺族への事前連絡がないまま出版されたことに対しては強い反発がある。殺害された土師淳くん(当時11)の父親は12日付で太田出版に抗議し、速やかな回収を求めた。

   京王書籍販売の担当者によれば、18日までにメールや電話が100件以上寄せられたといい、その多くが販売自粛に賛同する内容だったという。

   また、15道府県で「喜久屋書店」を展開するキクヤ図書販売(神戸市)も12日に全33店舗から手記を撤去したと報じられている。

現役書店員は「葛藤」を抱えつつ

   一方、販売するかどうかを各店舗の判断に委ねているケースもある。ある大手書店チェーンの担当者は「本部から自主規制するよう指示は出していない。配本が突然だったこともあり、各店の店長によく考えて判断するよう伝えた」と話す。

「原則としては、選択の幅を設けたい。よっぽどのことがない限りは『置かない』という判断にすべきではないと考えている」(同担当者)

   こちらは購入すべきかどうかは消費者の判断に任せるというスタンスだ。ただ販売を自粛している書店が注目を集めていることもあり、同社に対しては少なくない数の苦情や批判が届いているそうで、対応に苦慮しているようだ。

   別の大手書店チェーンでは、他の書籍と同じように通常どおり販売を行っていると回答。また、注文販売だけに切り替えた書店や、追加注文をかけないと決めた書店もあるようだ。

   ただ、販売を続けている書店の従業員たちが皆「売れること」に肯定的とは限らない。ツイッター上では葛藤を抱えた書店員らによるツイートが散見される。

「売れてるけど、店長と一緒に正直この本は売りたくないなぁと...」
「うちは販売してるけど、あんまり売りたくないなぁというのが本音です」
「書店員として売らなければいけないけれど、売りたくない」

図書館も対応に悩む

   対応に苦慮しているのは書店だけではなく、図書館も同じだ。

   兵庫県立図書館では被害者遺族の人権や心情に配慮し、貸し出しを制限する方針を決めた。神戸新聞などによると、同図書館では開架はせずカウンターで管理し、研究目的などの場合に限り館内限定で閲覧を認めるという。購入は1部のみ。複写も認めない方針だ。県内の神戸市立中央図書館は近く対応を決める予定という。

   インターネット上では「買うかわりに図書館で借りよう」という声も多く目にする。ちなみに東京都内の図書館(都立、区立、市立)の蔵書検索では18日昼時点で、「絶歌」は1冊もヒットしなかった。それぞれ購入しない方針なのか、入荷待ちなのか、検討中なのかは不明だ。神奈川県内の複数市の図書館でも蔵書検索を行ったところ、横須賀市でヒットした。同市図書館では4冊購入予定で、18日17時半時点で111件の予約が入っている。

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