2024年 4月 25日 (木)

東芝の「アキレス腱」原発が抱えた巨額損失 会計不祥事の後も続く「隠蔽」体質

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   会計不祥事で揺れる東芝が、2006年に買収した米原子力大手「ウエスチングハウス(WH)」を巡り、市場の不信感が高まっている。東芝は原発事業を主要事業に位置づけながら、これまでWH社の詳しい業績の開示を拒否してきた。

   しかし、2015年11月中旬、WHが過去に多額の損失を計上していたことが相次いで報じられ、東京証券取引所のルールに反して東芝が情報開示を怠っていたことも判明した。東芝は11月27日になって、ようやく釈明会見を開いたが、東芝に対する批判の声は止みそうにない。

  • 原発部門の「損失隠し」は、東芝の情報開示に対する後ろ向き姿勢の「決定版」
    原発部門の「損失隠し」は、東芝の情報開示に対する後ろ向き姿勢の「決定版」
  • 原発部門の「損失隠し」は、東芝の情報開示に対する後ろ向き姿勢の「決定版」

「のれん代」が巨額の損失に一変

   東芝は総額54億ドルを投じてWH株の9割弱を取得。2006年当時で6000億円を超える巨額のM&Aで、市場の関心を集めたが、その後は東芝の「アキレス腱」として注目されてきた。原発ルネッサンス(再評価)の流れが福島の東電原発事故を機に一変し、原発市場の冷え込みで「高値掴みしたWHで、東芝は巨額の損失計上を迫られる」との観測が出ているためだ。

   実際、各メディアは15年11月中旬、WHが12、13年度に計1000億円超の損失を計上していたと報道した。問題になったのは「のれん代」で、ブランド力や技術力など目にみえないものも考慮して、純資産を上回る額を「のれん代」として資産計上する。

   WHは福島第1原発事故後、原発の新規受注が進まず、「のれん代」を引き下げる減損処理を余儀なくされた。親会社の東芝は、これを公表していなかった。相次ぐ報道を受け、東芝は報じられた内容を追認するコメントを発表した。

   さらに、その後、開示していなかったことが東証の指摘でルール違反だったことも判明した。東証の規定では、上場していない子会社の損失であっても、純資産額の一定割合を超える損失を計上した場合、投資家に「適時開示」する必要がある。2012年度のWHの損失は開示が必要な水準で、このルールに抵触していた。

情報開示の不手際が「不信」に拍車

   今年春に会計不祥事が発覚して以降、東芝は記者会見をすぐに開かなかったり、深夜に情報を出したりするなど、広報対応の不手際が目立ち、情報公開に対する姿勢を疑われ続けてきた。この間、WHをふくむ原発事業について、記者会見などでも損失の可能性を問われたのは一度や二度ではない。それだけに、今回のWHをめぐる問題は、同社の情報開示に対する後ろ向きの姿勢の、いわば「決定版」となった格好で、改めて市場関係者から批判が噴出。やむなく11月27日に室町正志社長が記者会見を開き、WHの業績推移などを説明する異例の事態になった。

   室町社長は会見の冒頭で「不十分な開示姿勢を深くお詫びしたい」と陳謝。そのうえでWHや東芝の原発事業の業績推移を初めて公表した。原発の新規建設部門の低迷でWHは2012年度に8億6600万ドル、2013年度に5億7300万ドルの営業赤字を計上。ともに当時の為替レートで数百億円規模に上る。一方、東芝本体の原発事業も2013年度に358億円、2014年度に29億円の赤字に陥っていたことを明らかにした。

あまりに楽観すぎる先行き見通し

   ただ、東芝が示した原発事業の先行きに見通しは、あまりに楽観的との声が多い。世界で建設計画のある原発は400基以上だが、このうち64基の受注を目指していると説明。原子力の事業計画では2018~2029年度の平均売上高を1兆4000億円と現状の2倍以上を見込み、営業利益は年平均1500億円に引き上げるとした。しかし、東日本大震災以降、原発の新規受注はゼロで、今回の計画も「絵に描いた餅」になりかねない。原発事業の収益力低下を認める事態になれば、東芝自身が計上しているWH関連ののれん代(今年9月末で3441億円)に巨額の損失が出る可能性がある。原発事業が東芝立て直しのカギを握るとされるだけに、「収益を上げられると見込むほかない」というのが実情ということのようだ。

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