2018年 11月 16日 (金)

酒を飲んでも嫌なことは忘れられないって、ホント?

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   「お前、また振られちゃったの? よ~し、今晩はとことん飲もう!」。友に慰められながら失恋の痛手をヤケ酒で忘れようとしたアナタ。その悲しみ、次の日の朝には癒えた? 辛い想いがもっと深まってはいないだろうか。

   実は、酒を飲むと嫌なことが忘れられるどころか、ますます忘れられなくなるという、トホホな研究成果がある。アルコールに含まれる「酔わせる成分」のエタノールは、それまで記憶の低下を招くと信じられてきたが、むしろ記憶を定着させるというのだ。そのことを、2008年2月に東京大学の松本則夫教授(薬理学)らのチームがラットを使った実験で証明した。

  • 飲めば飲むほど、想いは募る(イラスト:サカタルージ)
    飲めば飲むほど、想いは募る(イラスト:サカタルージ)

「酒」を注射されたラットは、恐怖の記憶で2週間動かなかった

   松本教授らは、ラットを恐怖状態にするために軽い電気ショックを与えた。ラットは恐怖で動けなくなり、かごに入れられると体を丸めた。その直後に、半分のラットに生理食塩水を、残りのラットにエタノールを注射した。すると、食塩水を注射されたグループは、数日後には恐怖から立ち直ったが、エタノールのグループは、平均で2週間は恐怖で動けなかった。エタノールが怖い記憶を刷り込んでしまったのだ。松本教授は「辛いことがあったら、酒を飲まずに嫌な記憶の上に楽しい記憶を上書きするのが一番です」と語っている。

   同じような研究を、2011年3月に米テキサス大学のアルコール依存症研究施設に勤務する森川均教授(神経生物学)も発表している。施設の患者たちを対象に調査した結果、エタノールは一緒に酒を飲んだ相手、場所、雰囲気など記憶の断片を一時的に失わせる働きはあるが、実は、脳の情報伝達回路のシナプスを活性化させており、潜在意識の中に記憶をはっきり焼き付けていることがわかった。依存症の患者たちは、その記憶を呼び覚ましたいためにますますアルコールに溺れていくわけだ。

悲しい出来事は、酒の力で「古い記憶」に鮮明に残る

   しこたま酒を飲んで記憶をなくし、どうやって家に帰ったか覚えていない経験をした人も多いだろう。全国健康保険協会のサイトによると、酒で記憶がなくなることを「ブラックアウト現象」「アルコール性健忘症」などというそうだ。飲んだ時の新しい記憶は、脳の側頭葉にある「海馬」という部分に入るが、ここがアルコールでダメージを受ける。記憶の伝達を受け持つ「NMDAレセプター」という物質の働きが鈍くなり、新しい記憶の定着ができなくなるのだ。だから、「なかった記憶」となり、覚えていない。

   しかし、自分の家に帰るルートは「古い記憶」の置き場所に定着しているから、帰ることができる。どうやら、お酒は、悲しいことや怖いことなど衝撃の大きい出来事を「古い記憶」の置き場所に鮮明に残してしまうようだ。くれぐれもお酒は楽しく飲もう。

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