2024年 4月 25日 (木)

「とりあえずビール」は昔の話 ビール系飲料出荷「過去最低」をまた更新

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   ビール大手5社がまとめた2015年のビールの課税済み出荷量は前年比0.1%増の2億1489万ケース(1ケースは大瓶20本換算)と、19年ぶりに前年比プラスになった。ただ、ビール系飲料全体(ビールと発泡酒、第3のビールの合計)は同0.5%減の4億2492万ケースにとどまり、11年連続で前年を割り、統計を取り始めた1992年以降の過去最低を更新し続けている。

   ビール系飲料全体の不振は最盛期の夏場の天候不順などが影響した。このうち発泡酒は、より安い第3のビールの登場で減少を続けていたが、2014年秋ごろに各社が新製品を投入した効果がなお持続して、2015年は同0.3%増の6146ケースと2年連続のプラス。第3のビールは発泡酒に押されたほか、価格が近い酎ハイに客が流れたこともあって、同1.7%減の1億4856万ケースと2年連続で前年割れになった。

  • ビール類全体の販売縮小傾向に歯止めが掛からない
    ビール類全体の販売縮小傾向に歯止めが掛からない
  • ビール類全体の販売縮小傾向に歯止めが掛からない

「第3のビール」が全体の足を引っ張った

   ビール類全体のメーカー別シェアではアサヒが前年比横ばいの38.2%。主力ビール「一番搾り」の販売が伸びたキリンは前年比0.2ポイントアップの33.4%と、6年ぶりにシェアを伸ばした。2015年9月にビールの新商品「ザ・モルツ」を投入したサントリーも0.4ポイント上がって15.7%と過去最高。サッポロビールは、ビールは好調だったものの第3のビールの不振でシェアを落とした。

   「本物のビール」が伸びたのは、各社が力を入れたからだ。サントリーの「ザ・モルツ」は計画を6割上回る売れ行きを見せれば、キリンは「一番搾り」に経営資源を集中した結果、ビール出荷量が21年ぶりに前年を上回った。サッポロも味に改良を加えた「黒ラベル」が21年ぶりに前年超えるといった具合だ。こだわりの製法で少量生産する「クラフトビール」が話題になったことも、ビール全体の底上げにつながったとみられる。

   各社の取り組みの背景にあるのが、ビール類の税制見直しだ。ビール類の酒税は350ミリリットル缶当たりでビールが77円、発泡酒は47円、第3のビールは28円だが、味や飲み方が似ているのに税額が大きく異なることから、見直しが課題になっている。2014年末に議論になりかけたものの「庶民いじめ」の声もあって1年先送りされた。

   2015年末の税制改正作業では、自民党税制調査会が当初、段階的にビールを減税、発泡酒と第3のビールは増税し最終的に55円程度に統一するという具体的な数字も上げて検討する方針だったが、消費税の軽減税率の議論が紛糾したことなどから、2016年末に議論が先送りされた。

減税見込み、各社が「本物のビール」で強気の目標

   2016年の販売計画をみると、税制もにらんで、引き続き「ビール重視」で各社共通する。2015年はやや停滞感があった首位アサヒが7年ぶりに新ブランドのビール「ザ・ドリーム」を投入し、ビールで2015年比2.3%増の1億850万ケース、ビール類全体で同0.4%増の1億6150万ケースの目標を掲げる。キリンは47都道府県ごとに味わいが異なる「一番搾り」で地域密着をアピール。ビール類全体では同0.9%減の1億4060万ケースとマイナスを見込む一方、ビール本体は同2.3%増の5340万ケースを目標としている。

   サントリーはザ・モルツ、サッポロも「黒ラベル」に注力し、それぞれ、ビールが同6.3%増の2621万ケースと同5.2%増の3070万ケース、ビール類全体で同1.7%増の6765万ケースと3.2%増の5140万ケースとしている。

   ただ、ビール類全体の販売縮小傾向に歯止めは掛かっていない。特に「今の若者に『とりあえずビール』はない」(業界関係者)というように、若い世代のビール離れは深刻だ。「20~40代がビールを飲む機会を増やさないと(顧客層が)高齢化し、ビール市場は活性化しない」(サントリービールの水谷徹社長は)という問題意識は業界に共通する。

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