2024年 4月 26日 (金)

【熊本地震とインターネット(4)】
日奈久温泉「風評被害」を吹き飛ばしたい 「元気です」サイトで全国にアピール続ける

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   熊本地震で大きな被害が出なかったにもかかわらず、観光客が激減した熊本県八代市の日奈久温泉。震源としてメディアで盛んに取り上げられた「日奈久断層帯」と名前が同じため、J-CASTニュース2016年5月9日付記事では、温泉関係者が「風評被害というものを実感せざるを得ない」と嘆いていた。

   電話取材した翌週、記者は日奈久温泉にある創業100年以上の老舗旅館、金波楼を直接訪ねた。

  • 金波楼館主の松本寛三さん(左)と専務の松本啓佑さん
    金波楼館主の松本寛三さん(左)と専務の松本啓佑さん
  • 100年以上の歴史を持つ金波楼
    100年以上の歴史を持つ金波楼
  • 日奈久温泉の入口には俳人・種田山頭火の碑が建つ
    日奈久温泉の入口には俳人・種田山頭火の碑が建つ
  • 金波楼館主の松本寛三さん(左)と専務の松本啓佑さん
  • 100年以上の歴史を持つ金波楼
  • 日奈久温泉の入口には俳人・種田山頭火の碑が建つ

利用者の多くを占める熊本県民が被災した

   日奈久温泉は熊本市中心部から車で1時間ほどの距離だ。鉄道なら、最寄り駅から徒歩10分程度とアクセスが良い。日奈久温泉の入口には俳人・種田山頭火の碑も建っている。だが震災後は、客足がパッタリ止まってしまった。

「八代では本震の後の4月19日、震度5強の地震が起きました。当館ではこの影響が大きかったのです」

金波楼館主の松本寛三さんはこう明かした。一連の地震で、館内では壁に亀裂が入ったり、剥げ落ちたりしたが、建物自体は致命的な被害を免れた。温泉全体では、湯の供給も問題なかった。しばらくの間は復旧工事の作業員の受け入れを優先していたが、記者が訪れた5月中旬には一般客の受け入れを再開していた。

   だが、宿泊の予約は伸びない。「日奈久」という地名の影響もあるが、利用者の多くを占める地元・熊本県の人が大勢被災して観光どころではない現状もある。金波楼では、今も館内には壁のひび割れが残っているが、営業上に大きな支障はない。建物に地震の「傷跡」があるのを承知で宿泊する客がわずかでも戻ってきたのはありがたいが、今後1か月、2か月先も客足が途絶えたままだったら――。こんな不安を、松本さんは抱えている。

「とにかく『日奈久温泉は元気』とアピールするしかありません。いつでもお客様を迎えられますよと、私たちが発信していくべきだと思います」

   そのツールとして、インターネットへの期待は大きい。金波楼では震災前から、公式サイトとブログを運用してきた。かつて、宿泊客は「熊本と福岡で8割ほどを占めていた」が、ネットでの広報活動が奏功して関東や関西からの客も増えてきたという。電話での予約の際に「サイトを見ました」としばしば言われるようになった。ネットの発信力を、松本さんは重視している。

「日奈久なう」女将もフェイスブックで奮闘中

   金波楼でネットの情報発信を担当するのは、松本さんの息子で専務の松本啓佑さん。4月15日付のブログでは、「ここ日奈久は震度5と大きく揺れましたが、当館は大きな被害もなく済みました」と投稿した。その後の本震、さらに19日に八代市を襲った地震の影響で、20日には「今回の地震の影響で、断水と当館建物の被害により立ち入りが困難の為、しばらくの間、入浴も宿泊もお休みさせて頂きます」と告知した。すると「心よりお見舞い申し上げます」といった応援コメントが寄せられた。

   その後も「外来入浴再開」「日帰り入浴プランの紹介」といった内容を掲載し、復旧の様子を知らせてきた。

   啓佑さんは、日奈久温泉旅館組合の組合長も務める。「行政や組合員と話しました。熊本県内は被災地なので、県外に発信してアピールしようとの意見が出ています」と話す。ただ、金波楼以外の旅館の中には被害が大きく、今は宿泊客を迎え入れられないところもあるので、まずは日奈久温泉全体で受け入れ態勢を整えるのが先決だと話す。

   温泉旅館の女将たちも、ネットで奮闘中だ。「日奈久なう」というフェイスブックページで、震災前から女将の視点で日奈久温泉の魅力を伝えている。「『フェイスブックって何』という初歩から入りました」と話すのは、金波楼の女将・松本美佐緒さんだ。震災後は女将の会合を開く時間がなくフェイスブックの更新頻度は多くないが、「断層の悪いイメージを払しょくしたい」と意気込む。

   日奈久温泉は、夏休みから秋にかけてが書き入れ時になる。震災前のにぎわいを取り戻すうえで「特効薬」はないかもしれない。それでも館主の松本さんは、例えばネットを通して「復興プラン」のような宿泊サービスをアピールしたり、元気に営業している様子を逐一伝えたりして、地道かつこまめに発信し続けるのが大事だと考えている。

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